発言録 金大統領の国会演説を聞いて
(朝日新聞 1998/10/09)

自民・安倍信三氏

 試練を乗り越えてきた政治家の言葉として重みがあったし、全体のトーンも未来志向だった。しかし、歴史認識の問題に関連して、四百年も前の豊臣秀吉の朝鮮出兵にまで触れたのには驚いた。それでは、元寇で先兵になったのはだれなのかという議論になる。

 国としての反省、清算は日韓基本条約で終了した。二つの国が全く同じ歴史認識を持つことは不可能に近い。それを強いると、日本に言論統制を求めることになるし、「嫌韓」感情が高まるおそれがある。

 大統領が求めた在日韓国人への参政権付与にも疑問を感じる。韓国人だけに認めるわけにもいかないし、これは相互主義で解決すべきだ。

 もっとも大統領は政治家でもあり、韓国世論との兼ね合いもある。むしろ、日本政府の態度が問題だ。条約で終わったものを共同宣言という文書で謝罪すれば、次の大統領でまた繰り返される可能性がある。どこかの時点で、過去には今後一切触れないという決断を日本の首相がすべきだ。

 大統領の権力基盤は極めて強く、歴史認識問題に区切りをつけるチャンスだったが、まだ時間がかかりそうだ。

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