正恩氏「早期制裁解除を」 6月会談で習氏に協力要請
(読売新聞 2018/07/01)

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が6月19、20日に北京で習近平(シージンピン)中国国家主席と会談した際、「経済制裁で大きな苦痛を受けている。米朝首脳会談を成功裏に終わらせたのだから、制裁の早期解除に努めてほしい」と協力を要請していたことがわかった。習氏は「最大限努力する」と応じたという。

 中朝首脳会談の内情に詳しい複数の中朝関係筋が読売新聞に明らかにした。

 中国が6月28日、ロシアと共に、国連安全保障理事会のメンバー国に対北制裁緩和を求める声明案を配布したのも、正恩氏の要請を受けた動きとみられる。

 会談で正恩氏は、習氏に対し、非核化の進展に応じて米国が段階的な補償を行うべきだとする自身の主張に中国が同調するよう改めて求めた。正恩氏は制裁解除を「段階的な補償」の柱と位置付けている模様だ。

 正恩氏は、北朝鮮が非核化しても米国が見返りを提供しなかった場合、中国が北朝鮮の体制の安全を保証し、経済問題を解決してくれるよう習氏に求めた。正恩氏が中国に要求した体制保証について中朝関係筋は、「改革・開放導入に伴う情報流入などにより独裁体制が揺らいだ場合、中国が金正恩政権支持を明言し、擁護すること」と説明した。

 習氏は「北朝鮮の改革・開放を支持し、それに伴う諸問題に関して積極的に協力する」と表明した。

 正恩氏は米朝首脳会談で初対面したトランプ米大統領に関し、「話が通じる。度量が大きい」と好印象を語った。習氏は「焦らず、今後も中国と協議しつつ対米交渉を進めてほしい」と述べ、正恩氏の急速な対米接近をけん制したという。(豊浦潤一)


北、経済立て直し躍起 中韓資本導入狙う
(読売新聞 2018/07/01)

 6月の中朝首脳会談でのやりとりが明らかになり、北朝鮮の後ろ盾となって在韓米軍の撤退などをもくろむ中国の影響力を借り、北朝鮮が早期の経済制裁解除を目指す戦略が浮かび上がった。

■前のめり

 6月30日配信の朝鮮中央通信によると、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、鴨緑江を挟んで中国と隣接する西北端の平安北道(ピョンアンプクト)薪島郡を視察した。日時は不明だが、正恩氏の動静報道は6月の訪中以降初めてだ。正恩氏は、アシ総合農場を訪れ、同郡を「化学繊維原料拠点」に整えるよう現地指導した

 ラヂオプレスによると、この視察に同行した金成男(キムソンナム)氏(党国際部副部長)とキム・チャンリン国務委員会部長は、正恩氏の訪中に随行した。薪島郡には中国資本を呼び込んで委託加工の拠点に育てるため、北朝鮮が2011年に経済特区に指定した黄金坪(ファングムピョン)がある。正恩氏が早くも中朝経済協力の準備を進めているとの観測が韓国の専門家の間で出ている。

 北朝鮮は6月26日、鉄道・道路・山林など社会資本整備の経済協力に向けた実務協議を韓国と始めた

 しかし、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁は、北朝鮮との共同事業体の運営だけでなく車両、機械の搬入さえ禁じている中国や韓国との経済協力構想は、制裁解除まで絵に描いた餅にすぎない。トランプ米政権は現在、非核化実現まで経済制裁を解除しない構えを示しており、外資導入を当て込む正恩氏の経済建設路線は、前のめりにみえる。

■緩和ムード

 ただ、中国が北朝鮮への制裁解除に向けて動き始めた国連では、6月12日の米朝首脳会談以降、北朝鮮の人道支援に関心が高い欧州を中心に、制裁緩和に前向きなムードが芽生えつつあると国連関係者は話す

 中国は、北朝鮮の後ろ盾となって朝鮮半島の平和体制作りに関与し、在韓米軍の撤退や米韓合同軍事演習の全面中止など自国に有利な安全保障環境を生み出す狙いとみられる

 北朝鮮は昨年11月29日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射したのを最後に挑発行為を自制し、5月24日には豊渓里(ブンゲリ)の核実験場を爆破した。北朝鮮はこうした「実績」をもとに中国やロシアと制裁解除に向けた国際世論の形成を図るとみられる。

 国連安保理の経済制裁解除の手続きは、制裁決議を止める決議の採択のほか、制裁措置によっては例外適用の申請もできる。韓国・平昌(ピョンチャン)五輪や米朝首脳会談でも、安保理が渡航禁止対象に指定した北朝鮮高宮が、制裁措置を一時的に解除された。例外申請について安保理15か国が異論がなければ、一時的な制裁解除が認められ、決議より容易だ

 しかし北朝鮮は、寧辺(ニョンビョン)の原子炉の解体や核物質の申告など実質的な非核化措置に着手しておらず、日米韓は制裁維持の方針を堅持している。どの段階で国連制裁の解除に応じるかは「米中間の協議、とりわけトランプ大統領の意向で決まる」(元国連北朝鮮制裁委員会専門家パネル委員の古川勝久氏)との見方がある。(ソウル=豊浦潤一、ニューヨーク=橋本潤也)

◇北朝鮮に対する主な国連安保理の制裁
 ・石油精製品の供給を年50万バレルに制限(年間輸入総量の9割削減)
 ・北朝鮮からの石炭、鉄、鉛、木材、農水産物、繊維製品などの輸入を禁止
 ・北朝鮮への機械類、電気機器、運搬用車両などの供給を禁止。牛肉や酒、たばこといったぜいたく品も禁止
 ・北朝鮮の銀行が海外に支店を開設することを禁止。すでにある支店も閉鎖
 ・北朝鮮の個人・団体との合弁事業の開設、維持、運営を禁止