(読売新聞 2018/07/01)

 沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で領海侵入を繰り返している中国海警局が7月1日から、中国軍を統括する中央軍事委員会の直轄組織である武装警察部隊(武警)の指揮下に入る。日本政府は、海警局と中国海軍の連携による活動活発化や、武装強化につながる恐れがあるとみて警戒している。

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 海上保安庁によると、海警局の公船による領海侵入は、2012年に尖閣諸島が国有化された頃から続いている。日中関係が改善傾向にあるためか、減少傾向にあるものの、今年も12件確認されている。同庁は管轄する第11管区海上保安本部に尖閣警備に専従する巡視船12隻を配備し、厳重な警戒を続けている。

 海警局はこれまで公安省や国家海洋局の傘下にあり、公船の乗組員は事実上の「公務員」だった。組織改編後は軍人に準じる武装警察官に統一される。中国国防省の報道官は6月29日の記者会見で、「海警の基本任務の属性は変わらない」と説明。海上法執行機関である「海警局」の看板は下ろさず、日本など周辺国を刺激する軍の色彩は極力抑制する方針とみられる。

 だが、日本政府は中国側の公式見解に懐疑的で、「警察を装っているが、中身は軍人だ」(政府関係者)との指摘もある。南シナ海では5月以降、海警局の公船が海軍艦艇と合同パトロールをしたり、武警の「一部隊」として実弾訓練を行ったりしており、軍との連携が進んでいるようだ。

 海警局が保有する船舶の数は、海保の保有数をはるかに上回っているとされ、強力な機関砲を備えているものもある。今後は船舶の数、装備共に強化される可能性があり、自衛隊幹部は「海保の装備では現状でも太刀打ちできないが、さらに脅威が増す」と危惧する

しかし、日本側が海保ではなく海上自衛隊で対処しようとすれば、中国海軍に介入の口実を与えかねない

 尖閣有事は、重武装した偽装漁民による占拠などがきっかけになると想定される。こうした外国による武力攻撃と認定できないあいまいな侵害行為である「グレーゾーン事態」の初動は、海保や警察に委ねられることから、海保の能力強化が課題に浮上しそうだ

 日中両政府は6月8日から、自衛隊と中国軍の偶発的衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の運用を開始し、艦艇や航空機同士の直接通信に関するルールを定めた。だが、ルールの適用は自衛隊と中国軍が対象で、自衛隊と海警局に関する取り決めはない