(朝鮮日報 2018/06/12)

 韓国では6・13統一地方選挙があすに迫り、外国人有権者を意識した外国語の選挙用垂れ幕や広報物が各地に登場している。韓国はアジアで唯一、外国人に参政権を付与した国だ。今年の外国人有権者数は10万人を超え、これら外国人有権者の票を得ようとする各候補の競争は激化した。一部では「外国人が密集する地域では選挙情勢の大きな流れを外国人が左右することもあり得る」という予測が出ている。

 京畿道安山市檀園区元谷洞には、今月4日から中国語の選挙用垂れ幕が掛かっている。「共に民主党」の秋連鎬(チュ・ヨンホ)安山市議候補が掛けたものだ。垂れ幕には「皆さんの安全な生活定着のため努力します」という文言が中国語の簡体字で記されている。秋候補は「小さいけれど大きな働き者」と記した中国語の名刺6000枚も持ち歩いた。安山市は、外国人の人口が市の全人口(72万938人)の7.6%に相当する5万4470人に達し、このうち4999人が有権者だ。正義党のチョン・ユジン始興市議候補は、選挙戦の序盤から英語・ロシア語・中国語で広報資料を作り、ソーシャルメディアに載せた。「共に民主党」の金一権(キム・イルグォン)梁山市長候補は今月7日、ベトナム語の公約広報動画を動画サイト「ユーチューブ」に載せた。金候補は「出馬する梁山には製造業に従事する外国人住民が多く、こうした人々を攻略するために制作した」と語った。

 韓国国内の外国人は、2006年の5・31第4回地方選挙から投票権を付与された。国内永住権を取得してから満3年が過ぎた19歳以上の外国人は、誰でも投票ができる。永住権者は、兵役と教育の義務はないが、納税の義務はある。これら外国人有権者の投票権は地方選挙に限られ、総選挙と大統領選挙では投票できない。地方選挙は、当該地域で納税と経済活動を行っている住民に焦点が合わせられるが、大統領選挙と総選挙は、憲法で明示している韓国国民を対象として行われるものだからだ。また、アジアで外国人に地方選挙権を付与している国は韓国が唯一だが、西欧諸国では外国人に参政権を与えているケースは多い。欧州、米国の一部の州、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどでは、韓国に先駆けて外国人に地方選挙での投票権を与えている。

 地方選挙における外国人有権者の数は、過去3度の選挙を経て15倍に増えた。2006年の時点で6726人だったが、今回の選挙では10万6205人。外国人有権者の76.5%(5月現在)が韓国系中国人だ。およそ10年前から「F4ビザ」と呼ばれる在外韓国系向けの特別ビザが導入されたことで、韓国系中国人が大挙、韓国で就職活動に身を投じるようになった。こうした韓国系中国人の相当数が永住権を取得した。5億ウォン(現在のレートで約5100万円)以上不動産に投資した中国人も、一定の滞在条件を備えれば永住権をもらえる。最初に外国人参政権が導入された時点では、中国系ではなく台湾の華僑が外国人有権者の99%を占めていたが、今では全有権者の10.8%にとどまる。日本人が6.4%、ベトナム人が0.9%、米国人は0.8%だ。また、外国人有権者のおよそ5分の1は結婚移民だ

 外国人有権者が最も多いのは京畿道。総数は3万8541人で、安山市(4999人)、富川市(4055人)に大部分が集まっている。ソウル市の外国人有権者(3万7923人)は永登浦区(6601人)、九老区(5826人)を中心に集まって暮らしている。仁川市(7716人)、忠清南道(3383人)、慶尚南道(2593人)にも外国人有権者が少なからず存在する。

 外国人の投票率は伸びていく見込みだ。2014年の選挙で、外国人の投票率は17.6%にとどまっていたが、今年は20%を超える可能性が出てきている。ソウル市麻浦区に暮らす台湾人のチャン・ジネさん(25)は「今までは外国人が少数だったし、はっきり外国人のためという公約もなく、大きな関心は持っていなかった。今回の選挙では必ず、貴重な一票を行使したい」と語った。


(朝鮮日報 2018/06/12)

 韓国において、国内居住外国人に投票権を与えようという動きは1999年の金大中(キム・デジュン)政権時代に本格化した。日本政府に、在日韓国人への参政権付与を促すためだった。韓国国内の外国人に参政権を与えてこそ、日本に要求できる名分が生じるという論理だった。当時、右派寄りの在日団体「在日本大韓民国民団」(民団)が日本で地方参政権獲得運動を推進していた。2001年には韓国国会改革委員会特別委で選挙法改正案が合意に至ったが、02年に立法は白紙になった。韓国憲法第1条「大韓民国の主権は国民にあり、全ての権力は国民から出る」という規定に背くという指摘があったからだ。

 その後も、外国人参政権は根気強く推し進められた。とりわけ、02年の韓日FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ以降は開放基調が強まり、経済協力開発機構(OECD)加盟国の多くが外国人の地方選挙投票権を認めているという事実が判明したことで、立法の後押しとなった。地方選挙は国民ではなく住民が参加するもの-という論理で、韓国憲法第1条との衝突を避けることができた。05年8月、韓国国会で公職選挙法が改正され、国内長期居住外国人に地方選挙の投票権が与えられた。

 投票権が付与されてから初の選挙となった06年の5・31第4回地方選挙には、6579人の外国人選挙権者が参加した。このうち台湾人が6511人(99%)で、絶対多数を占めていた。そのほかは、日本人が51人(0.8%)、米国人が8人(0.1%)、中国人が5人、ドイツ人とカナダ人がそれぞれ1人だった。