中国人ビザ発給拒否 訴訟大詰め
(東京新聞 2018/06/09)

外務省も政権忖度?

 旧日本軍の細菌戦の被害をシンポジウムで証言してもらおうと、2015年に日本の市民団体が招待した中国人12人が外務省からビザ発給を拒まれた。この問題で、「『集会の自由』を妨害された」と、市民団体関係者が国に賠償を求めた訴訟が、大詰めを迎えている。国側は訴訟でも入国拒否の理由をきちんと説明せず、原告らは「政権への付度ではないか」と追及している。(大村歩)

原告ら経緯を追及

 シンポジウムは「戦争法の廃止を求め侵略と植民地支配の歴史を直視し アジアに平和をつくる集い」。市民団体「アジアと日本の連帯実行委員会」が二〇一五年十一月二十七日から三日間、都内で開いた。中国、韓国の戦争被害者が証言する内容だった

 訴状などによると、市民団体は、このシンポで証言してもらおうと、旧日本軍の七三一部隊が行った細菌戦の被害者遺族や、被害者協会の弁護士ら中国人計十二人を招待。団体側の一瀬敬一郎弁儀士が、十一月上旬に在北京日本大使館と上海の総領事館に、十二人のビザを申請した

 それまでは四、五日で出ていたのに、大使館側は「調査中」「本省の指示待ち」などと引き延ばした。同月二十五日になり「今回は発給しない」という回答があった

 このため中国人十二人は来日できず、シンポの内容も変更された。これを受け、市民団体のメンバー三人と、入国できなかった中国人のうち三人が、一六年三月に「違法なビザ発給拒否によって集会を妨害された」として、国を相手取って東京地裁に提訴した

 訴訟は八日に第九回口頭弁論を終え、大詰め。原告側が求めている当時の外務省外国人課長と中国・モンゴル第一課長ら三人の証人尋問を、裁判所が認めるかが焦点になっている。ビザ発給は外国人課の所管だが、発給申静を受けた後に、外国人課が中国・モンゴル第一課と協議していたことが、同省の内部資料から判明したためだ。

 当時は安全保障関連法が成立してから二カ月ほどで、政権を批判する国民の声も多かった時期。だから、発給拒否の背景に政権への「付度」があると原告側は疑っている

 三人への尋問で、発給拒否に至った詳しい経緯を追及しようと構える。原告側弁護団の浅野史生弁護士は「外務省は『課長レベルで判断しているから政治的意図はない』という理解に苦しむ主張をしている」と述べる。

 一方、外務省は訴訟の中で「発給申請を却下した理由に、シンポの趣旨への政治的判断は一切ない」と否定。通常、発給拒否の理由は明らかにしないのに、今回の訴訟では「日本国内で身元を保証する人に、保証能力がない」ことだったと説明した。

 原告の一人で、一橋大名誉教授の田中宏氏は首をかしげる。「保証人は、過去何十人もの外国人の保証人を引き受けてきた一瀬弁護士。問題はまったくない。苦し紛れにめちゃくちゃなことを言っている」

 原告で「村山首相談話を継承し発展させる会」理事長の藤田高景氏は、シンポジウム名に「戦争法」の言葉が入っていたことが、拒否の理由とみる。

 「安全保障関連法を『戦争法』と呼ぶことを極端に嫌う安倍晋三首相に外務官僚が付度して、発給を拒否したのではないか。明らかな集会つぶしだ。森友・加計両学園のモリカケ問題が発覚する前から、安倍政権は付度が蔓延していたということだろう」と語る。