(朝日新聞 2018/05/26)

 北朝鮮による日本人拉致被害者の家族らが「千載一遇のチャンス」と期待していた米朝首脳会談の中止をトランプ米大統領が表明した。一夜明けた25日、家族らはその判断に理解を示しつつ、拉致問題の早期解決を願った。

 「中止は適正な判断だったと思う」。拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(79)は埼玉県春日部市で取材に応じた。「これまでも北朝鮮はうそをついたり、自国に有利に図ろうとしたりしてきた。きちんとしない決着では意味がない。家族会の大方は、(トランプ氏の)判断は仕方がないだろうという気持ち」と語った。

 拉致被害者で福井県小浜市に住む地村保志さん(62)、富貴恵さん(62)夫妻は「中止が発表されたことは、誠に残念」としたうえで、「北朝鮮に残る拉致被害者の皆さん、ご家族の皆さんは高齢化して、解決には一刻の猶予もありません。今後、日朝間での対話が再開され、拉致問題が早期に全面解決されることを心から願ってやみません」とのコメントを発表した。

 北朝鮮による拉致の疑いがある特定失踪者の家族らも複雑な心境を明かした。

 古川了子(のりこ)さん(失踪当時18)の姉、竹下珠路(たまじ)さん(74)は「賢明な判断」とトランプ氏を支持し、態度を硬化させた北朝鮮の姿勢に不満を募らせた。「北朝鮮がもっと追い込まれた時こそ家族を取り返すチャンスが広がる」

 一方、大沢孝司さん(失踪当時27)の兄、昭一さん(82)は「まっすぐには行かないと思ったが、あまり回り道をされても困る」と述べた。