(読売新聞 2018/05/08)

 文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が読売新聞に寄せた書面インタビューの回答全文は次の通り。(回答の日本語訳は韓国政府による)

(略 Q1~2 南北首脳会談)

 ◆Q3◆ 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と直接会談をされましたが、どのような印象を受けられたのかお伺いしたいと思います。交渉の相手として信頼できる人物だと感じられましたか

 今回の首脳会談の間ずっと、私と金正恩委員長は心を開いて対話をしました。対話のテーマは朝鮮半島の平和から南北関係に至るまで、幅広いものでした。朝鮮半島の平和と繁栄を実現するという金正恩委員長の強い意志を確認したことは、今回の首脳会談の大きな成果と言えます。

 会談の中で、金正恩委員長はとても率直で実用的な人であるとの印象を受けました。私と金委員長は朝鮮半島の完全な非核化という共同の目標を確認し、「板門店(パンムンジョム)宣言」という貴重な合意に至ることができました。今後は互いへの厚い信頼を基に、平和と繁栄、統一に向けた大胆な一歩を踏み出していきます


 ◆Q4◆ 北朝鮮の核問題、朝鮮半島の平和と安定のために日本はどのような役割を果たすことができると思われますか。

 日本は、朝鮮半島の平和と繁栄のためにとても重要な役割を果たすことができます。完全な非核化の達成に向けた韓・日・米の連携、北朝鮮の体制の安全を保証するための日朝関係正常化など、さまざまな面においてそうであると思います。特に私は、日朝間の対話が再開されるべきだと思います。日朝関係が正常化されれば、朝鮮半島を超えて、北東アジアの平和と安定に大いに寄与すると思います。

 金委員長とも日朝関係について話し合いました。私は、安倍総理が過去の清算に基づく日朝国交正常化を進めていく意思があることを伝えており、金正恩委員長は、いつでも日本と対話する用意があるということを明らかにしました

 朝鮮半島と北東アジアにおいて世界史的な大転換が始まりました。韓国は、これからも日本と緊密に意思疎通を行いながら、連携していきます。米朝首脳会談の成功はもちろん、朝鮮半島の恒久的な平和定着に向けた今後の道のりに対する日本の積極的な支持と協力を期待しています


 ◆Q5◆ 日本では、北朝鮮による日本人拉致問題が大きな問題となっています。日韓首脳会談の中で安倍総理から大統領へ協力を要請するものとみられています。韓国でも400人を超える拉北者(北朝鮮に拉致された人)がいるということですが、日本人拉致問題において大統領のご協力を期待してもよろしいでしょうか。

 拉致被害者問題が日本政府と日本国民にとってどれほど重要な事案であるのかよく理解しています。この問題を重視している安倍総理からのご要請もありましたが、何より、人道的な問題であるため、これまでこの問題を北朝鮮側に提起してきました。金正恩委員長と首脳会談を行った時にも改めて直接この問題について話しました。

 拉致被害者問題は日朝間の長きにわたる難題として残っており、この問題の解決に対し、日本国内で悲観論も高まっていると承知しております。しかし、慎重を期しつつ、積極的な姿勢で話し合いを進めていけば、解決の糸口を見つけられると思います。

 振り返りますと、これまで北朝鮮の核問題を含め、北朝鮮の態度の変化に対しても悲観的な見方が強くありました。しかし、対話のためのたゆまない努力を通じ、平昌(ピョンチャン)冬季五輪では小さな平和の流れが生み出され、南北首脳会談で北朝鮮は完全な非核化と恒久的な平和定着に合意しました。

 何より持続的な対話を通じ、日朝間の懸案が解決されることで、長い間続いている拉致被害者のご家族の方々の痛みが癒やされることを願っています。そのためにも日本政府とともに、引き続き協力してまいります。


 ◆Q6◆ 日韓の間には過去の歴史から起因する難しい問題が多く、こうした懸案に対する両国間の立場の相違が縮まらない場合が多いため、両国関係の進展を妨げています。歴史問題によって両国の友好協力関係が長く持続できず、冷え込み続け、歴史問題は永遠に解決できないとの見方もありますが、こうした問題をどのように解決できるとお考えですか

 韓国と日本は地理的に近く、文化的・歴史的に多くの部分を共有している隣国同士です。しかし、ここ数年間、両国関係が停滞しているとの印象を両国の多くの国民が受けているのではないかと思います。

 両国が真に心を通わせ、より近づくためには、不幸な歴史により苦痛を受け、心に深い傷を負った被害者の方々の容赦と和解が必要です。

 政府間の条約や合意だけでは、日本軍慰安婦被害者を含む多くの方々が個人としての人間的尊厳を回復し、心の傷を完全に癒やすことは難しいと思います

 真心のこもった誠意ある反省と謝罪が被害者に伝えられ、受け止められなければなりません。目をそらしたい歴史であればあるほど、正面から直視し、その歴史を教訓としながら二度と過去のような残酷なことが起こらないように一緒に努力していく時にはじめて被害者の傷が癒やされ、真の和解が可能になると思います。これに基づいて新たな未来を切り開いていくことが、完全な歴史問題の解決であると思います。

 私は、両国が歴史問題を賢く克服するための努力を傾けていく一方で、歴史問題と切り離して両国間の未来志向の協力を推進していきたいという立場を一貫して示してきました。こうした過程を通じて、両国がお互いに心を通わす真の友達になれるよう、大統領として最善を尽くしていきます。

(略 Q7~11 未来志向の日韓関係・両国経済関係・就任1周年など)


ムン・ジェイン朝鮮労働党南部支部報道官でした。