(朝日新聞 2018/03/24)

 元慰安婦についての記事を「捏造(ねつぞう)」と断定され名誉を傷つけられたとして、元朝日新聞記者の植村隆氏(現韓国カトリック大客員教授)が、ジャーナリストの櫻井よしこ氏や出版3社に損害賠償や謝罪広告の掲載を求めた訴訟が札幌地裁で山場を迎えている。23日には本人尋問があり、「捏造」と指摘した櫻井氏の論文が名誉毀損(きそん)にあたるかについて、両氏が意見を述べた。

 植村氏は朝日新聞大阪社会部の記者だった1991年、韓国人元慰安婦の金学順(キムハクスン)さんの証言を記事化。8月に「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」、12月に「かえらぬ青春 恨の半生」などの見出しで主に朝日新聞大阪本社版に掲載された。

 これらの記事のうち、元慰安婦について「『女子挺身(ていしん)隊』の名で戦場に連行され」と書かれた部分などを挙げ、櫻井氏は2014年に月刊誌「WiLL」や「週刊新潮」「週刊ダイヤモンド」誌上で「捏造記事」「意図的な虚偽報道」などと指摘する論文を書いた。植村氏は櫻井氏のほか3誌を発行するワック、新潮社、ダイヤモンド社も訴えている

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 櫻井氏の論文が掲載された当時、植村氏は北星学園大学(札幌市)の非常勤講師だった。大学や家族に脅迫が相次いだのは「櫻井氏の言説に力を得た一部読者が匿名で不当な攻撃を重ねたため」と植村氏は主張。この日の尋問では「当時の韓国では、挺身隊という言葉を慰安婦の意味で使っていた。私は間違ったことは書いていない」と述べた。

 一方の櫻井氏は「金氏は『女子挺身隊の名で戦場に連行されて売春行為を強いられた』と述べていないのに、植村氏がそう書いたことが問題だ」と強調した。

 植村氏はこの訴訟のほか、自身の記事について「捏造と言っても過言ではない」と西岡力・麗沢大客員教授がコメントした14年の「週刊文春」の記事をめぐっても、西岡氏と同誌を発行する文芸春秋を相手取った訴訟を東京地裁に起こしている。

◇記事をめぐる訴訟の経緯

 挺身隊と慰安婦の言葉の使い方をめぐる議論は、今年2月の口頭弁論でも焦点となった。植村氏の記事直後の91年8月に金氏に直接取材し、記事を北海道新聞に掲載した喜多義憲・元同紙記者が証人として出廷。「女子挺身隊の美名のもとに従軍慰安婦とされた」と記事に書いた経緯について「金氏が『私は挺身隊だった』と名乗ったからだ」と説明。植村氏の記事をめぐる櫻井氏の主張について「捏造というのは言いがかりだと感じた」と述べた。

 朝日新聞社は14年に一連の慰安婦報道を検証。その中で植村氏の記事も調べ、「意図的な事実のねじ曲げはなかった」と結論づけた。また、朝日新聞の慰安婦報道に対して3グループが朝日新聞社を相手取り損害賠償などを求めた訴訟を起こしたが、すべて今年2月までに原告敗訴が確定。「挺身隊の名のもとに連行され慰安婦にされた」という表現が韓国内で60年代までに報道されていたことが、確定判決で認定されている。(編集委員・北野隆一、磯部征紀)


(産経新聞 2018/03/24)

 元朝日新聞記者で慰安婦報道に関わった植村隆氏(59)が、記事を「捏造」と書かれ名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの櫻井よしこ氏や出版社3社に損害賠償などを求めた訴訟で、植村氏と櫻井氏双方の本人尋問が23日、札幌地裁(岡山忠広裁判長)であった。7月6日に結審する。

 植村氏は朝日新聞記者だった平成3年8月、元慰安婦が「『女子挺身隊』の名で連行された」とした大阪本社発行の記事について、「連れていかれた所で監禁され意に反して慰安婦にさせられた。だまされて戦場に連れて行かれた。一連の行為で『連行』と書いた」とした。また、「当時の韓国では慰安婦が『挺身隊』を意味していた」と証言し、意図的に慰安婦と挺身隊を結びつけたのではないと主張した

 一方、櫻井氏は、後に作り話と判明した吉田清治氏の「女子挺身隊の名のもとで強制連行された」に呼応する形で植村氏の記事が書かれたと主張。「植村氏は(吉田氏の)作り話の被害者が実際にいると書いた」とその影響力の大きさを指摘した上で「植村氏は公開討論の呼びかけにも応じてこなかった」と批判した。


2017年02月24日