自由なきチベット今も 行動制限「巡礼できない」
(読売新聞 2018/03/08)

暴動から10年

 中国のチベット自治区や青海省などで2008年3月に少数民族チベット族と当局が衝突するなどしたチベット暴動から、14日で10年となる。習近平(シージンピン)政権は少数民族に対する民生政策の成果を強調しているが、実際には、チベット族の信仰の自由や行動の自由は厳しく制限されたままだ。

■敏感なテーマ

 北京で開かれている全国人民代表大会(全人代=国会)で7日、チベット族を中心に少数民族が人口の約半数を占める青海省の分科会があった。

 省トップの王国生・同省共産党委員会書記は「我が省の少数民族は生活への満足度が増している」と、少数民族への優遇政策や貧困対策などの成果を誇った。しかしチベット族代表の一人は本紙の取材に、「よくわからない」と語ったのみだった。チベット問題は依然として敏感なテーマだ。

 2月下旬、10年前に暴動が波及した四川省甘孜チベット族自治州の州都・康定。公安当局は、旧正月を祝う行事が行われていた広場周辺に10台以上の警察車両を配置する厳戒態勢を敷いた。重要政治イベントである全人代や暴動10年の節目を控え、抗議運動を警戒していたのは明らかだった。

■不満と怒り

 実際、暴動から10年を経てもなお、チベット族の中国政府への不満と怒りはくすぶり続けている。

 ある僧侶は「移動は制限され、チベット自治区の寺院に巡礼に行くこともできない」と不満を明かした。また別の僧侶は、「日本や他国の仏教を学ぼうと思っても、我々にはパスポートが発給されない」と嘆いた。取材に応じた僧侶らは一様に周囲をうかがいながら小声で話し、当局の監視網の厳しさをうかがわせた。

■抗議の自殺152人

 インド・ダラムサラに拠点を置くチベット亡命政府によると、09年から17年12月までに中国政府への抗議の焼身自殺を図ったチベット族は152人に上る。

 ただ14年以降は、外部に伝えられる焼身自殺の件数は少なくなっている。チベット族の政府への怒りをかき立てる焼身自殺を防ぐため、政府はチベット族への監視を強め、焼身自殺者の家族への「報復」を行っており、こうしたことが影響している可能性がある。

 中国政府と亡命政府による自治問題を巡る対話も10年を最後に中断したままだ。習政権が高齢のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の「影響力低下を待っている」との見方もある。

 ロブサン・センゲ亡命政府首相は「中国は北京五輪前、チベットの人権問題の改善を約束した。約束を果たすよう国際社会が働きかけるべきだ」と訴える。

【クリップ】チベット暴動

 2008年3月14日、中国チベット自治区ラサで、民族差別や信仰の自由の抑圧に不満を持つチベット族の僧侶や市民が政府機関や商店などを破壊、放火した。暴動は青海、甘粛、四川省などチベット族が多く暮らす地域にも拡大し、中国政府は軍を動員して鎮圧。インドのチベット亡命政府は鎮圧による死者は200人以上と発表している。


2008年03月15日
2008年03月31日
2010年06月04日
2012年02月02日
2013年10月10日