(朝日新聞 2018/03/06)

 韓国と北朝鮮は4月末、南北軍事境界線上にある板門店の韓国側施設「平和の家」で南北首脳会談を行う。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と5日に会談した韓国大統領府の鄭義溶(チョンウィヨン)国家安保室長が6日夜に発表した。韓国側の説明によれば、北朝鮮は非核化の意思を表明し、対話が続く間は核実験や弾道ミサイルの試射を行わないとした。

 南北首脳会談の開催は2000年6月、07年10月に続いて3回目。

 韓国側の発表によると、北朝鮮は「軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」とした。また「非核化問題の協議と米朝関係の正常化のため、米国と虚心坦懐に対話する用意がある」とも表明したという。

 金委員長は米トランプ政権による攻撃を憂慮しているとされる。北朝鮮はこれまで、3月18日の平昌パラリンピック閉幕後に実施される予定の米韓合同軍事演習の中止を求めてきた。4月末の首脳会談開催に応じた背景には、米国による軍事的脅威を減らしたい思惑があったとみられる。また対話に前向きな韓国政府を利用し、国際的な制裁強化や米国の攻撃を避けたい狙いがあるとみられる。

 ただ6日付の党機関紙・労働新聞(電子版)は論説で核保有の正当性も主張。核・ミサイル開発を続ける姿勢を変えていない。南北関係筋によれば、2月に訪韓した金英哲(キムヨンチョル)党副委員長も韓国に対し、核保有国の地位を確認したうえでの核軍縮交渉でなければ応じられないとしていた。

 訪朝した鄭氏と徐薫(ソフン)国家情報院長は8日、ワシントンでマクマスター米大統領補佐官(国家安全保障担当)らに訪朝結果を説明する。訪米後、鄭氏が中ロ、徐氏が日本を訪れる予定だ。関係国が南北の動きを受けてどう対応するかが次の焦点になりそうだ。

 韓国側は、南北合意を基に、米国に対して米朝対話の実現を働きかける見通しだ。ただ北朝鮮が本当に非核化に応じるかはっきりしないなか、米国が対話に応じるかは不透明だ。北朝鮮の非核化が確認できるまで、北朝鮮が抑留する米市民3人の解放問題を議題にする案も非公式に浮上しているという。

 南北朝鮮はこのほか、軍事的緊張緩和のため、首脳間のホットラインを設置し、首脳会談前の開設を目指すことでも合意した。また北朝鮮は核兵器のほか、通常兵器を韓国に向けて使用しないと確約した。朝鮮半島の平和を最優先すると訴えてきた文政権に配慮した格好だ。(ソウル=牧野愛博)

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 韓国大統領府が6日夜に発表した北朝鮮との合意の要旨は以下の通り。

 ①韓国と北朝鮮は4月末、南北軍事境界線上にある板門店の韓国側施設「平和の家」で南北首脳会談を行う。

 ②南北朝鮮は軍事的緊張緩和のため、首脳間のホットラインを設置し、首脳会談前の設置を目指す。

 ③北朝鮮は朝鮮半島の非核化の意思を明確にし、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され、北朝鮮の体制の安全が保証されれば、核を保有する意思がないことを明確にした。

 ④北朝鮮は非核化問題の協議と、米朝関係の正常化のため、米国と虚心坦懐(たんかい)に対話する用意がある考えを表明。

 ⑤対話が続く間、北朝鮮は追加の核実験と弾道ミサイルの試射など戦略的挑発を再開しない考えを表明。

 ⑥北朝鮮は核兵器はもちろん、通常兵器を韓国に向けて使用しないと確約。

 ⑦北朝鮮は平昌冬季五輪を契機に醸成された南北の和解と協力の良い雰囲気を続けるため、韓国テコンドー模範演技団と芸術団の平壌訪問を招待する。


(朝日新聞 2018/03/06)

 突如発表された、韓国と北朝鮮の首脳会談。両国の関係は変化するのか。北朝鮮による拉致被害者の家族や、在日コリアンからは期待と不安の声が上がった。

 拉致被害者家族連絡会の飯塚繁雄代表(79)は「南北が仲よくなり、核やミサイルが飛ばないのなら、戦争するより良い」と評価した。「韓国が北朝鮮と対話をするというチャンスを日本政府もうまく生かし、韓国に働きかけて拉致問題が進展するような方法を考えて欲しい。韓国に『日本と交渉して拉致問題を解決すれば、北朝鮮も潤う』と言ってもらうなどすれば良いのではないか」と話した。

 一方、拉致被害者家族の市川健一さん(72)は「国際社会が制裁を加える中、北朝鮮は五輪を通じて韓国に近づいているのではないか。これまでも譲歩するとみせて見返りをもらい、約束をほごにしている。北朝鮮の政策が変わるとは思わない」と、国際社会が引き続き圧力をかける必要性を訴えた。

 朝鮮半島の統一を願うイベントを毎年、日本で開いてきた大阪市の在日コリアン3世の鄭甲寿(チョンカプス)さん(63)は「歓迎したい」と話した。1985年から始めた音楽イベントは最近、数千人以上が参加し、企業からも寄付が集まるようになった。鄭さんは「楽観はできないが、対話をきっかけに、交流の拡大につなげてほしい。北朝鮮で苦しい生活を強いられている人たちの援助につながることを願いたい」と語った。

 朝鮮学校に子どもを通わせていた在日コリアン3世の女性(55)は「いつ戦争が起きるかと気が気でなかったのに、こんな日が来るとは思っていなかった」と喜んだ。この10年ほど、朝鮮学校や在日朝鮮人への風当たりの強さを感じてきた。「閉ざされた南北の交流が再開し、朝鮮半島や日本の人々がともに手を携える契機になってほしい」と期待を寄せる。


時間稼ぎと米朝平和協定や↓の履行の推進が目的でしょうが、韓国が北朝鮮に引きずられているというより、ムン政権と北朝鮮による「北朝鮮のための共同作業」という感じですね。

 盧武鉉氏が南北首脳会談で合意した「10.4宣言」の実現であり、まさに北朝鮮が要求しているものだ。「海州(ヘジュ)に経済特区を建設」「黄海に共同漁労水域を設置」「開城工団の第2段階を開発」「開城―新義州(シンウィジュ)間の鉄道と開城―平壌間の高速道路を改修」「南浦(ナムポ)・安辺(アンビョン)に造船協力地区を建設」「ソウルと白頭山(ペクトゥサン)に直航路を開設」……。読み返すと、具体的な経済協力の項目が並ぶ。

 当時、韓国統一省は実現にかかる費用総額を「15兆ウォン近く」と見積もり、民間シンクタンクには50兆~100兆ウォン以上に達するとの試算もあった。
2017年05月31日