(朝鮮新報 2018/02/15)

県による裁量権の乱用認める

県立公園・群馬の森(群馬県高 崎市)に位置する朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑をめぐり、碑を設置した「記憶・反省そして友好」の追悼碑を守る会(以下、守る会)が、群馬県に設置更新の不許可処分取り消しなどを求めた訴訟の判決が14日、前橋地裁(塩田直也裁判長)4号法廷で言い渡された。

地裁は、県による不許可処分に「裁量権の逸脱」があったことを認め、違法であるとして処分を取り消した。

一方で、原告側が求めた10年間の更新申請許可の義務付けについては棄却。また申請に至る経緯を踏まえたうえで、「強制連行」という文言を理由に、「政治的行事」があったとして、県側が許可条件違反であると主張した点については「不明確な理由ではない」とし、主張の一部を認める判決を下した。

当初、県議会において全会一致で決議された碑の設置は、県と守る会による双方での話し合いのうえ、2004年4月に建立された。しかし、抗議団体による街宣活動などをきっかけに、14年7月、①追悼集会での来賓のあいさつに「政治的」発言があり、該当の碑が②「紛争の原因」になるとしたうえで、突如県側が設置更新を不許可とし、碑の撤去を求めていた。

判決後、記者会見を行った原告側弁護団の角田義一弁護団長は、「権力を相手に堂々と闘ってきたが、県が行ったことは社会通念に合わせて違法であり、世間では通らないことだということを裁判所が認めた。10年間の更新を認める義務はないとした部分については非常に残念だが、これは勝利であると宣言したい」と発言した。

同弁護団事務局長の下山順弁護士は、「保守団体の抗議を受けて県が不許可処分をしたが、判決内容は追悼碑の効用は依然残っており、碑の価を正面から認め、県の姿勢を強く批判したものだった」と評価した。

下山弁護士は、棄却された更新期間の義務付けや「政治的行事」の有無についての地裁の判断に、「不満の残る点がある」としたうえで、「『強制連行』という用語が歴史学的に確立しているにも関わらず、県の主張する許可条件を不明確ではないとした裁判所の判断は不当だ」と訴えた。

また、「文科省の許可のもと教科書が作成され、そこに強制連行という文言も載っているにもかかわらず、その発言を理由に政治的行事であるとするのは不当ではないのか。今後強制連行という言葉が、死語にならないか心配だ」という会場からの声に、「その点については一番憂慮していることだが、まず前提として、その文言自体に政治性があるという意味ではない。あくまでも、申請に至る経緯を踏まえ本件に限って『政治的行事』に含まれると判断された。裁判所には政治的行事の範囲を限定する判断を示してもらうよう促していきたい」と強調した。

判決をうけ、守る会の上野ひさ共同代表は、「県による判断が違法であることを認め、原告側の主張が司法で通ったことは、画期的であり嬉しい」とする一方で、「許可の義務付けが棄却されたことは、おかしいと思う。歴史的に意味がある碑を、仮に期間がすぎたといって壊せるのか」と司法の判断に疑問を投げかけた。

原告側弁護団では、今後原告との協議のうえ控訴などの方針を明らかにする予定だ。


(朝鮮新報 2018/02/15)

“完全勝利を目指して”

朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑について、県が設置許可を更新しないのは違法だとして、「記憶・反省そして友好」の追悼碑を守る会が、処分の取り消しを求めた民事訴訟。

前橋地裁は、県が行った不許可処分は「合理性を欠いており、その結果、社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くもの。裁量権を逸脱した違法がある」として処分の取り消しを命じた。

◇3つの争点

裁判は、県の行為が憲法で保障されている「表現の自由」の侵害にあたるのか、追悼集会が「政治的行事」になるのか、県側との話し合いを続けているなか、一方的に碑の撤去を求めた県側の判断は「裁量権の逸脱」、「違法」になるか、などが主な争点となった。

今回の判決は、実際に傍聴席で聞いていた原告側支援者らが「主文が複雑で最初は勝ったのかわからなかった」と話すほどに、言い回しにおいてわかりにくいものだったが、原告側弁護団長の角田義一弁護士は「裁判所は、一つ一つの事案に誠意を持ち回答しようという姿勢がうかがえた」として一定の評価を示した。

争点の一つ目となった「表現の自由」の侵害の有無について、判決では、「公園管理者が都市公園管理のために、必要な範囲内で条件を付することができる旨を法が規定している」としながら「表現の自由といえども絶対無制約のものではない」として、追悼集会での発言と関連した原告側の主張を退けた

また、追悼集会における来賓のあいさつに「強制連行」という文言が使用されたことについて、県が許可条件に反する行為だと主張した点については、両者による協議の過程で、碑文案から「強制連行」という文言を削除するなどした経緯があり、「(強制連行を用いることが)碑の内容とは異なる主義主張を訴える行為に当たることを、双方で共通認識として持っていた」と指摘。

そのうえで地裁は、追悼碑に関して「強制連行」の文言を使用して歴史認識に関する主義主張を訴えることを目的とする行事は、「死者を悼む目的を超えて、政治性を帯びることは否定できない」としながら、過去に行われた追悼集会が「政治的行事」に含まれると争点の二つ目について判断した。

一方で、このような「政治的行事」があったにも関わらず、県が当初何の対応もせず、またこれによる公園利用者への影響も確認できないことから「(政治的行事が)公園の効用を全うする機能を喪失させたとはいえない」と結論付け、県による行為が「裁量権の逸脱であり違法」であることを認定した。

また、原告側の求めた設置許可更新の10年間の義務付けについては棄却した。

今回、県による追悼碑の設置不許可が、地裁によって取り消されたことにより、今後、県側は、設置およびその更新について許可をするのかどうか、判断をせまられることになる。

◇連帯・連携から生まれた「勝利」

この日地裁前には、傍聴席をめぐり120人以上が列をつくり、いつにも増して大勢の取材陣と支援者らが集まるなど、この問題に関する関心の高さをうかがわせた。

現在、関東大震災における朝鮮人大虐殺はじめ、追悼碑の問題について研究する国際基督教(ICU)大学大学院の鄭優希さん(1年)は、仮に裁判で敗訴した場合、各地に設置されている追悼碑の今後にも影響出る恐れがあるとして、裁判の傍聴に通い続けたという。

鄭さんは「追悼碑によって記憶されてきたものが、なかったことにされてはいけないという思いで今日まで見守ってきたが、ひとまず安心した」としながら「この問題は、一日二日で解決するものではない。市民や行政など、今後も日本社会における歴史認識の差をうめていけるよう励みたい」と話した。

新潟国際情報大学の吉澤文寿教授は、「地裁が『公園の効用を全うする機能を喪失したとはいえない』としたことは、『強制連行』という発言をしたからといって追悼碑そのものの存在意義は覆らないということを、司法が認めたこと」としたうえで「歴史を研究する一研究者として、学術的にもすでに意義のある(「強制連行」という)文言が、今後歴史修正主義をうたうものたちによって乱用されないよう、あくまでも特定の事案とその経緯に限った司法の判断だということを周知させていきたい」と話した。

総聯群馬・西毛支部の李和雨委員長は、今回の訴訟を振り返りながら「3年に及ぶ裁判闘争を経て、不十分ではあるが勝利を獲得できた」と喜びをかみ締めながら「現在、無償化裁判をはじめさまざまな闘いが各地で行われているが、少しでも力を与えることができたのではないか。今回の勝利は、群馬という一地域だけではない、強制連行真相調査団の活動をする皆の連帯と連携のなかで生まれたもの。今後も完全な勝利を目指して、県へ働きかけていきたい」と強調した。