(朝日新聞 2018/01/10)

 韓国政府は昨年末から、日韓慰安婦合意の扱いを巡って迷走した。複数の関係者の証言をたどると、文在寅(ムンジェイン)政権の高支持率の維持を重視した大統領府が、日韓関係の悪化回避を模索した韓国外交省を振り回した構図が浮かび上がる。背景には、政権の外交省と外交官に対する強い不信感があった。

 康京和(カンギョンファ)外相が9日に合意を巡る新たな措置の一部を発表したのは、大統領府から外交省に指示があったためだ。10日に予定される文氏の年頭記者会見前に、懸案を整理する姿勢を明確にした形だ。関係筋の一人は「合意を破棄と言っても維持と言っても波紋を呼ぶ。日本や元慰安婦らに挟まれる汚れ役を外交省に押しつけたということだろう」と語った。

 迷走の経緯をたどると、韓国外相直属の検証チームが、合意の検証結果を発表したのは昨年12月27日。韓国側の負担が大きい「不均衡な合意」とした。康外相は同日の記者会見で、元慰安婦らの意見を重視する考えは示したが、合意の扱いを巡る新たな方針づくりを急がない考えを示した

 関係筋の一人によれば、外交省は、日本側が事前に「合意の維持以外は受け入れられない」と申し入れた事実を深刻に受け止めていた。合意の破棄を主張する元慰安婦らと面会を重ねることで、事態を沈静化させて合意の維持を模索したい考えもあった。

 ところが、文氏は翌28日、「この合意では慰安婦問題は解決されない」と表明した。「重大な欠陥があった」とも指摘。日本は猛烈に反発した。

 韓国政府元高官は、大統領府の強硬姿勢について「7割という高支持率を維持するためだ」と指摘。「合意破棄と再交渉を求めていた大統領選の公約を守る姿勢を強調したかったのだろう」と語る。

 ただ、大統領府は結論も急いだ。大統領府高官は検証結果発表の直後から、早期に新たな対日方針を発表する見通しを示唆した。韓国国会議員の一人は「平昌冬季五輪の成功が、文政権の当面の最優先課題だったからだ」と語る。

 文政権は6月の地方選での勝利を目指している。地方選で勝てば、野党から与党にくら替えする議員が出て、安定した政権運営が可能になると考えるからだ。そのため、世論にアピールできる五輪を成功させたい。文政権は安倍晋三首相も開会式に招待していた。安倍氏に出席してもらうためには、日韓関係の早期収拾が必要だった。

 大統領府が日韓関係を政治的に利用したのは今回が初めてではない昨年11月7日、大統領府は、訪韓したトランプ米大統領との夕食会に元慰安婦を招いたが、事前に外交省や日米両政府に伝えなかった

 こうした背景には、文政権の外交省に対する強い不信感がある。南北対話や対中外交を重視する文政権は、日米との外交を基調としてきた韓国の伝統外交と距離を置いてきた

 さらに、文政権と同じ進歩系の盧武鉉(ノムヒョン)政権で外交通商相に抜擢(ばってき)された潘基文(パンギムン)氏は、一時保守系候補として大統領選に立候補する動きを見せた元外交通商相の宋旻淳(ソンミンスン)氏は大統領選直前に出した回顧録で文氏を批判した。政界関係筋は「潘氏と宋氏の動きは、文政権にとって裏切りに映った」と語る。外交省は最近、新たな大使・幹部人事を発表したが、保守政権時代に活躍した米国通の外交官らの多くが昇進できなかった。(ソウル=牧野愛博)


中国に事大してやっていくのなら外交部署なんて必要ないですもんね。

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