慰安婦少女像  異論噴出 大阪市長表明 サンフランシスコ姉妹都市解消
(東京新聞 2017/11/29)

 慰安婦問題を象徴する米サンフランシスコ市の少女像をめぐり、大阪市の吉村洋文市長が60年続く同市との姉妹都市を解消しようとしている。市長の「独断」に、議会や国際交流団体は再考を求める。長年積み重ねてきた関係を、市長の一存で決めていいものだろうか。(加藤裕治)

◇草の根60年 水の泡に

 「この件に関して政党会派を超えて正当な行動をとるべきだと思います。先祖、子孫の名誉にも関わります」。吉村氏は二十三日、ツイッターに書き込んだ。この件とは少女像のこと。そして「信頼関係は消滅した」とコメントを出し、十二月中にサンフランシスコ市と手を切る手続きを済ませる方針を明らかにした。

 吉村氏が目くじら立てる少女像は九月、現地の中国や韓国系の団体が中華街近くの民有地に設置した。中韓、フィリピンの少女三人が背中合わせに手をつなぐデザインだ。

 団体はこの土地をサンフランシスコ市に寄贈し、市長が二十二日、寄贈を受け入れる文書に署名した。それが解消表明の引き金になった。大阪市は、少女像がある上海市とも姉妹都市。こちらは大学が設置したもので、関係の見直しはしないそうだ

 サンフランシスコ市と姉妹都市となったのは一九五七年。大阪市の担当者は「当時のアイゼンハワー大統領が米国の自治体に民間交流を促し、相手側から話があった」と説明する。

 姉妹都市についての法律はなく、両市長で決めることができるという。少女像の設置が報じられた九~十月に市には二百件を超える意見が市内外から寄せられた。十一月はさらに多い。そのほとんどが解消に賛同するものだという

 もちろん反対もある。自民、公明の両市議団は交流を続けるよう求める意見書を吉村氏宛てに出した。そして、だれよりも落胆しているのは、草の根で交流を担ってきた市民だ。

 「政治問題にまきこまれないように、市民、子どもたちの交流を進めるのが姉妹都市の原点です。こんなことで解消するのはおかしい」。若者の交流を進めてきた市民団体「大阪サンフランシスコユースコネクト」会長の久保井亮一・大阪大名誉教授は憤る

 二〇一三年に橋下徹前大阪市長が慰安婦について「当時は必要だった」と発言して物議を醸した件を引き合いに、吉村氏に再考を求める。「橋下氏の発言にサンフランシスコ側は猛反発した。それでも解消を口にすることはなかった。姉妹都市は若者の交流が主眼で、政治問題を持ち込もうという考えはなかった」

 久保井氏は「このままでは取り返しのつかない事態になる」と心配する。「騒ぐから相手方に火を付ける。関係を絶つと、世界のあちこちに像が立ってしまう。解決するには、若者の交流を進め、互いの理解を深めるしかない」と話す。

◇万博誘致なのになぜ

 しかし、なぜ吉村氏は長年の関係を考慮しないのか。「政治家・橋下徹に成果なし。」の著者で、帝塚山学院大の薬師院仁志教授(社会学)は「大阪市を丸裸にしたいのでしょう」と断じる。その先には、吉村氏が所属する維新の悲願「大阪都構想」があるとみる。

 「大阪市をつぶして特別区に再編するなら、姉妹都市を解消しておけば楽になる。(市が決めた)地下鉄の民営化も同じ発想だ」。一度、住民投票で否決された都構想にこだわるのも「維新存続のため」と指摘しながら続けた。「ほかに深い考えがあるようにはみえない。だから万博の誘致に手を上げる一方で、味方になりそうな姉妹都市と手を切るような矛盾が出る」

tokyo2017112965786


賛成する人の声は一言も取り上げないんですね。