(ニュース1 韓国語 2017/11/26)

「昨年、ルーブル美術館の収蔵庫に3時間ほどいたが、その日『私たちが無理に欲を出してはいけない。誤った韓紙が入れば人類の資産を台無しにするかもしれない』と思いました。」

キム・スンス(金承洙)全州市長が全州韓紙世界化プロジェクトの一環としてヨーロッパ文化財復元市場に進出するために昨年、フランス,パリのルーブル美術館に行ってきたことを紹介しながらした話だ。

キム市長は、なぜそのように考えたのだろうか。全州韓紙を世界に堂々と出すためには越えなければならない山が多いということを誰よりもよく知っているためだ

全州韓紙がどのような弱点を持っているのか一つずつ接近してみると“越えなければならない山”が何か知ることが出来る。

全州韓紙はまず、韓紙を作る方法で大きな弱点を抱えている

韓紙は簀型(簀桁)で楮繊維(楮の皮を剥いて抽出した繊維)が入った水を漉く方式により、我が国伝統の『片簀漉き』と日本から流入した『双簀漉き』に分かれる

片簀漉きは水を流しながら簀型を前後左右に揺り動かすため『流し漉き』と、双簀漉きは水を簀型に閉じ込めた状態で揺り動かすため『溜め漉き』と呼んだりもする

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▲キム・チョンジョン全州韓紙匠 『片簀漉き』実演

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▲キム・チョンジョン全州韓紙匠 『双簀漉き』実演
↑の動画↓



※日本は作る紙によって『流し漉き』と『溜め漉き』を使い分けているようです。先端を1本で吊った枠のない簀桁(記事中の『片簀漉き』)は使用しません。

ながし‐ずき【流し漉き】
和紙の手漉き法の一つ。パルプ状にした紙料に植物性粘液を混入した紙料液を竹製・萱(かや)製の簀(す)ですくい上げ、全体を揺り動かしながら紙層をつくり、数回のすくい上げで厚さを調節したのち、表面の液とともに塵などを流し捨てる方法。薄くてねばり強い紙を漉くのに適し、日本で特に洗練された漉き方。(広辞苑 第6版)

ため‐ずき【溜漉き】
紙の手漉き法の一つ。パルプ状にした紙料を、簀(す)ですくい上げ、漉桁(すきげた)の上桁の中に溜め、あるいは揺り動かして水を切り、紙の層を作る。中国古来の方法で、広く世界に行われる。(広辞苑 第6版)

片簀漉きは簀型を前後左右に揺り動かすので紙のきめが井戸の井の字の形にからまる。それで紙が丈夫で寿命が長い。双簀漉きは紙の寿命が短いが生産性が良いという長所がある

イム・ヒョンア韓紙産業支援センター研究開発室長は「一日に片簀漉きで100~200枚を作るなら、双簀漉きでは400~500枚まで作ることができる」と話した。

全州韓紙業者は現在、双簀漉きで紙を作っている。このために他の地域の片簀漉き匠人(職人)から「全州韓紙は伝統韓紙ではない」という非難を受けている

イム・ヒョンア室長は「古くから全州の韓紙産業が発達していたため、日帝が紙生産のために全州に双簀漉きを導入し、それによって全州の紙産業がさらに発達することになった歴史的な背景がある。他の地域も双簀漉きをたくさんしているが、全州が産業化の面で最も成功をしたという理由で非難が集中するようだ」とした。

昨年基準の国内手漉韓紙(機械でなく手で作る韓紙)業者は計22か所だ。全羅北道が10ヶ所で最も多く、慶尚北道が5か所、慶尚南道・忠清北道・江原道が各2か所、京畿道が1か所の順だ。このうち全州市所在の業者だけで7か所に達する。

全州に国家指定や広域自治団体指定の韓紙匠人がいないことも弱点だ

現在、文化財庁指定の韓紙匠人は京畿道加平郡と全羅北道任実郡に一人ずつ2人がおり、広域団体指定の韓紙匠人は慶尚北道の青松郡と聞慶市、忠清北道の槐山郡と丹陽郡に一人ずつ計4人がいる

全州に韓紙職人がいない理由は、片簀漉きなどの伝統方式が敬遠されているためだと知られている。

韓紙の原料である楮をほとんど輸入に依存している点も弱点の一つに挙げられる。

林業統計年譜資料を見ると、1983年に80トン8,596㎏(8万8,596kg)に達していた全国楮生産量は2013年に5,129㎏で急減した。伝統韓紙の需要減少で日増しに栽培面積が減った上、値段が安い外国楮原料との競争で押されているためだ。2014年に1万536㎏、2015年に1万3,619㎏と上昇したことが不幸中の幸いなのが現状だ。

こうした中、2015年の楮生産量は慶尚北道が1万2,704㎏、慶尚南道が735㎏、忠清北道が180㎏の順だ。全羅北道は“ゼロ”だ

全州市が楮に関心がないのではない。2005年から2010年まで全州市完山区上林洞と任実郡新徳面、鎮安郡馬霊面などに20万株以上を植えた。しかし、管理がきちんと行われず、すべて失敗した

全州韓紙業者は楮原料を慶尚北道の安東市、慶州市、醴泉郡など他の地域から一部購入し、足りない分はタイなど外国から購入している。だが、外国楮は四季を耐える国産楮に比べて繊維の質が落ちるという。

幸いなことは全州市がこのような内容を隅々まで把握しているという点だ。

キム・スンス市長は、ルーブル美術館収蔵庫で感じたその重い心もこのような問題点をよく知っているためだと説明した。

キム市長は2014年の就任以降、全州市の支援機関である韓紙産業支援センターとともに、全州韓紙をどこに出しても恥ずかしくない韓紙にするために足りないものが何か探すことから始めた。

そうして昨年、22個の重点事業を骨子とした全州韓紙産業育成ロードマップを作った

ロードマップは優先順位まで付けた。韓紙匠人指定が第1順位、伝統韓紙製造基盤造成が第2順位、楮インフラ構築が第3順位だ。

全州市は直ちに昨年『韓紙産業の育成および支援条例』を制定し、これを基に今年4人の『全州韓紙匠』を指定した

国や道の指定ではないが、キム市長は「彼らが昔の方式をできないのではなく、需要がないからしなくなっているだけ」と話した。

今はお金になる双簀漉きをしているが、朝鮮王朝実録の複本のように需要があれば片簀漉きで韓紙を作る能力は十分あるということだ。

実際、彼らが参加した朝鮮王朝実録の複本事業は片簀漉きで行われた

イム室長は「当時、片簀漉き方式を基本として、紙の色と厚さ、重さなどを合わせるてくれることを全国の業者に要請し、全州の業者も当然片簀漉きで韓紙を作った」とした。

実録の複本事業が行われた6年間、全州の業者は片簀漉き作業だけで年間2,000万~4,000万ウォンずつの売り上げを記録したという。

キム・スンス市長が今回、フランス,パリのユネスコ本部に持って行った韓紙掛け軸と法王に伝達した『高宗皇帝親書』もすべて全州の業者が片簀漉きで作った韓紙で製作された

キム市長は「彼らが昔の方式で伝統韓紙を生涯維持するには年にA4用紙約3万枚の需要が必要だ」としながら「地方行政研修院の修了証やテコンドーの段証などでも使われるように、現在10万枚を目標に四方八方走っている」とした。

第2順位である伝統韓紙製造基盤の造成も片簀漉き環境の造成が核心だ。

韓紙のメッカであった完山区西棲鶴洞黒石谷一帯に、2019年までに国費25億ウォンと地方費45億ウォンの合計70億ウォンをかけて伝統韓紙製造(生産)施設を作り、片簀漉きなど昔の方式を守る伝統韓紙を作るという計画だ。

長期的には韓屋村などと連係した観光資源として活用するという構想だ。

ウ・ヨンヨン全州市観光産業課韓文化チーム長は「伝統韓紙製造施設を復元することにより、韓紙産業を活性化し、ひいては観光資源との連係を通じて伝統文化複合団地として育成する計画」としながら「来年に着工が行われるように万全を期する」と明らかにした。

全州市は楮インフラ構築にも再び出た。

今年初め、中仁洞と牛牙洞に楮苗木1万2,000株を植えた。過去の失敗事例を考慮し、今回は農民が木を育てるようにして後ほど買い上げることにした。一種の契約栽培方式だ

実録の複本事業の際に韓紙を買い入れたように楮を買い入れれば、農民が木を丹念に育てるという計算だ。

成功の可否はまだ分からないが、全州市は5年後から毎年40トンほどの楮原料を得ることができると見ている。

韓紙産業育成ロードマップは、これら第1~3順位に続き△後継者の養成△伝統韓紙買い入れ制度△伝統韓紙製造技術の構築△文化財復元事業システム構築などの順で優先順位が決められた。最後の第22順位は韓紙産業振興の法制化だ。

イム・ヒョンア室長は「韓紙匠人の一部は後継者養成計画も確実に持っていることが確認された」としながら「現在推進中の韓紙関連事業はこのロードマップの優先順位に基づいて進めている」と話した。

「ルーブルは復元、バチカンは複本で、ユネスコは価値です。韓紙で単純に商品だけを作り出すのではなく、世界文化遺産の保護とかアフリカの学生たちを助けるとかしながら全州韓紙のブランド価値を高めることが世界化戦略の一つです。」

全州韓紙世界化のためにヨーロッパに行ってきたキム市長の話だ

行く道は遠い。日本和紙が掌握している文化財復元市場に進出しなければならず、まだ門が開いていない古文書複本市場は開拓をしなければならない

そのためには全州韓紙の競争力を今より数段階さらに高く引き上げることが急務だ。

キム市長は「昨年にルーブル美術館収蔵庫で3時間ほどいたが、その日『私たちが無理に欲を出してはいけない。誤った韓紙が入れば人類の資産を台無しにするかもしれない』と思いました」としながら「本当の韓紙を作ってきちんとしなければならないという使命感が生まれ、今そうしている」と話した。

全州韓紙が『本当の1000年以上行く韓紙』として復活し、韓紙の世界化を先導することができるか注目される。(機械翻訳 若干修正)