(朝日新聞 2017/10/25)

 旧日本軍の慰安婦像が建てられた米サンフランシスコ市の民有地が、同市に譲渡されたことが朝日新聞の調べでわかった。姉妹都市提携を結ぶ大阪市の吉村洋文市長は「像をパブリックスペース(公共の場所)に置くなら関係は解消する」と宣言しており、今年で60周年を迎えた姉妹都市は解消の危機を迎えた。

 慰安婦像は今年9月、現地のチャイナタウンにある市営公園に隣接した民有地に地元の民間団体が建てた。サンフランシスコ市議会に提出された資料によると、像は幅約90センチ、高さ3メートル。3人の女性が背中合わせに手をつないでいるデザインだ。現地報道によると、中国、韓国、フィリピンから慰安婦となった女性を表しているという。

 同市議会によると、民有地は今月16日、市営公園の拡張地として市に譲渡された。翌17日には民間団体のメンバーや市議らが出席し、像の一般公開を祝う式典が開かれた。現在では通行人も像を間近で見ることができるという。

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▲市営公園に組み込まれ、一般に公開された慰安婦像(右奥)の前で記念写真を撮影する市議や関係者(今月17日、米サンフランシスコ市、市議のサンドラ・リー・フューワー氏事務所提供)

 式典に出席した市議のジェーン・キム氏の広報担当者は朝日新聞の電話取材に「サンフランシスコには韓国系や中国系の住民が多い。像は女性全体にとっても歴史的に大切なものだ」と話した。米国勢調査局によると、サンフランシスコはアジア系の出自を持つ住民が35%を占める。

 慰安婦像をめぐっては、2015年にサンフランシスコ市議会で記念碑をつくるべきだとの決議が提案されたことをきっかけに、当時の橋下徹市長が「不確かで一方的な主張にもとづいている」と反発。大阪市は2015年8月から今年9月にかけて、サンフランシスコ市長などに宛てて文書で計6回、抗議を続けてきた。吉村市長は今年9月25日、慰安婦像が市営公園に組み込まれた場合、姉妹都市関係を解消する方針を表明していた

 今月23日には、姉妹都市提携60周年を記念してサンフランシスコ市の代表団が大阪市を訪問したが、吉村市長は「像の設置は我々日本人にとって大きな問題だと市長に伝えていただきたい」と念押しし、通算7回目の市長宛ての抗議文を手渡した。大阪市はこの時点で土地譲渡の事実を確認していなかったという

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▲サンフランシスコ市代表団のキャスリーン・キムラ姉妹都市協会共同委員長(右)から記念品を受け取り、握手する吉村洋文・大阪市長(左)=23日、大阪市役所、半田尚子撮影

 サンフランシスコ市議会では現在、像自体の寄付を受ける議案が上程されている。予算財政委員会での審議を経て、今月31日の全体会議にかけられる見通しだ。議員11人の過半数が賛成し、市長も承認すれば、像自体も市有化される

 吉村市長は25日朝、朝日新聞の取材に「まずは事実関係を確認する。確認できれば、これまで言ってきたとおり進める」と述べ、関係解消を示唆した

 大阪市は1957年にサンフランシスコ市と姉妹都市提携を結び、市民の語学交流などを続けてきた。吉村市長は「(姉妹都市を解消したとしても)民間レベルの草の根の運動は続けてもらった方がいい。(交流のための)予算は執行していく」と述べている。(半田尚子)
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 《サンフランシスコ市の慰安婦像問題》 同市議会は2015年9月、旧日本軍の慰安婦について記念碑をつくるべきだとの決議を全会一致で採択。決議文には「サンフランシスコは移民とその子孫の街。アジアや太平洋諸島の国々に先祖を持ち、日本の性奴隷システムの過去を直接、間接に経験した人も多い」などと記されていた。橋下徹・大阪市長(当時)は「戦場の性の問題を旧日本軍のみに特有であったかのように扱うのは、問題解決につながらない」などと抗議文を送付。15年末に就任した吉村市長も慰安婦像への対応を引き継いだ。

2017年10月23日
2017年10月04日