(読売新聞 2017/08/17)

 北朝鮮による弾道ミサイル発射など朝鮮半島情勢が緊迫する中、在韓邦人の退避計画を検討している日本政府は、北朝鮮からの攻撃などの際に韓国政府が全国で指定している「避難所(シェルター)」に邦人全員を収容できることを確認した。退避計画では避難後の邦人輸送を盛り込むが、邦人救出のための自衛隊の艦船や航空機の派遣に関して韓国側の同意を得られるメドは立っておらず、韓国政府との協議を急ぎたい考えだ。

 外務省などによると、在韓邦人は約5万7000人で、仕事などを理由にした長期滞在者が約3万8000人、観光目的などの短期滞在者が約1万9000人。在韓邦人の退避計画策定を担当する日本政府職員が5月以降、複数回にわたってソウルなどを訪問し、韓国政府が避難所に指定している地下鉄駅や高層ビルの地下駐車場などを視察韓国政府側から、避難所に指定された施設が全国に約1万8000か所あり、韓国の人口と在韓外国人数を足した約5200万人を大きく上回る人数を収容できるとの説明を受けた

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▲避難所を示す赤い看板。韓国では地下鉄駅や地下街が指定されている(16日、ソウル市内で)=ソウル支局撮影

 日本政府は、在韓邦人の退避計画について、危険レベルを4段階に分け①観光客など不要不急の渡航中止要請②渡航中止勧告③退避勧告④避難所への避難・輸送――を想定している。避難所への避難は、北朝鮮による韓国への大規模攻撃など危険レベルが最も高いと判断された場合に、事態が沈静化するまで約72時間を目安に滞在するよう促す。

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 退避計画の最大の焦点は、避難所に一時避難した後の韓国国外への退避方法だ。しかし、この邦人輸送方法には課題が多い。北朝鮮による韓国への大規模攻撃が行われれば韓国国内の空港は閉鎖され、民間機での邦人の移動が困難になる可能性が高い。このため、日本政府は在韓米軍に、あらかじめ指定した複数の集合場所から南東部・釜山(プサン)の港までの陸上輸送を要請し、その後、自衛隊の艦船で福岡県の港まで輸送するなどの案を検討している

 自衛隊の艦船を活用する場合、韓国政府や自治体の同意が必要となるが、韓国国内の自衛隊への反感が根強く、調整は進んでいない。日本政府は韓国側に有事の際の邦人退避に関する協力や支援を引き続き求めていく方針だ。

【クリップ】避難所(シェルター)
 北朝鮮による武力攻撃や災害の際に一時避難するための韓国国内の施設。避難専用施設のほか地下鉄駅構内や高層ビルの地下駐車場などが韓国政府によって指定されているケースもある。韓国政府は年に数回、すべての国民と外国人を対象に「民間防衛訓練」を実施し最寄りの施設に避難するよう指導している。

2017年07月19日