(朝日新聞 2017/06/16)

 その異例の人事に、外務省内で驚きと同情の声が上がったのは、5月半ばのこと。韓国・釜山の森本康敬総領事の更迭説が広がったのだ。

 ソウルの日本大使館前に続き、釜山総領事館近くにも昨年末、慰安婦問題を象徴する少女像が立った。安倍政権は対抗措置として長嶺安政・駐韓大使と森本さんを3カ月にわたって一時帰国させた。

 外務省関係者らによると、「更迭」の経緯はこうだ。

 一時帰国中の森本さんが旧知の記者と食事をした際の発言メモがなぜか流出自分は邦人保護などを担う総領事だから早く戻って仕事ができればいいといった発言を、別の社の記者が「政権批判」と問題視し、政府高官にご注進。逆鱗(げきりん)にふれ、任期わずか1年で異例の交代――。

 人事は1日に発表された。菅官房長官は「通常の人事」と語ったが、産経新聞は「事実上の更迭」と報じた。

 政権に弓を引くような言動は許さない。トップの意向に配慮して先に人事を断行。これまた、このごろ都にはやる忖度(そんたく)か。だが森本発言は政権批判と思えないし、こんな理由で更迭されるなら公務員は仕事への意欲すら語れまい。

 森本さん本人は「事実関係を含めてノーコメント」の一点張り。ただ、「ご注進」が事実ならメディアのあり方としても重大な問題をはらむ

 韓国側に強く抗議するのはわかるが、状況に何の改善もないまま自らこぶしをおろさざるをえなかった日本政府の措置はとても不細工だった。しかも、一時帰国させるのは大使だけで十分との声は、早くから省内に出ていた。

 韓国で「更迭」はどう受け止められているのか

 森本さんと長年の付き合いがある元外交官は「日本の主張は頑固なほど曲げないが、韓国の意見にも耳を傾けて、『話し合おう』という気にさせてくれる人。残念だ」。釜山の与党関係者は「タフネゴシエーター(手ごわい交渉者)。彼がいなくなれば事態はさらに悪化するだろう」と今後の不安を口にした。

 二国間で決めた条文や合意文が重要なのは当然だが、外交にはそのすき間を埋めるような努力が欠かせない。信頼があれば相手の気持ちをやわらげられる。周辺取材で浮かび上がるのは、そこに汗するベテラン外交官の姿だ。

 相手にガツンと言うのは得意だが、成果どころか逆に事態を悪化させる。アジア外交の厚みが、すり減っている。(箱田哲也 国際社説担当)


ちなみに「有料会員限定記事」のタイトルは↓。「忖度」より「ご注進」を推してますね。

asahi2017616000


流行りだから「忖度」も使いたいし、元祖“ご注進メディア”としては「ご注進」も入れたいという気持ちが、このタイトルと本文になったんですかね。