(朝日新聞 2017/05/28)

 東シナ海の海洋権益をめぐり、日本と中国が静かに火花を散らしている。中国は自国の大陸棚が尖閣諸島(沖縄県)近海まで続いていると主張し、海洋調査を繰り返す。日本も調査態勢を強化する中、韓国が島根県の竹島(韓国名・独島〈トクト〉)周辺で調査を実施するなど、摩擦が広がっている。

 19日、自民党本部で開かれた「領土に関する特命委員会」。新藤義孝委員長は日本の排他的経済水域(EEZ)や領海で活発化する中韓の動きについて、こう語った。「中国の海洋調査船も5月に入ってきた。韓国も(竹島周辺で)海洋調査をやった。中国は無人飛行機ドローンも飛ばした。しっかり対処していかなければならない」

 尖閣沖の領海に侵入した中国公船の甲板付近で無人飛行機ドローンの飛行が初めて確認されたのが18日。中国はこの海域への公船や海洋調査船の派遣を繰り返す。17日には竹島近海で、韓国の海洋調査船が日本の領海内に一時侵入した。

 こうしたせめぎ合いのなか、日本は海洋調査の態勢強化を進めつつある

 今年1月20日朝、北九州市の第7管区海上保安本部。長崎県・五島列島沖に投入した無人の海洋観測装置(AOV)のトラブル信号が飛び込んできた。秒速20メートルの強風が吹き、波は4~5メートル。通信衛星を経由した遠隔操作を繰り返したが、「制御不能だ」。7管が翌21日にAOVを回収してみると、ケーブルがちぎれ、推進機の水中グライダーがなくなっていた

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 昨秋にも沖縄の1基が台風のさなかに壊れており、海上保安庁は腰を据えて改良に取り組むことにした今年2月に全調査海域で運用を停止。半年近くかけて構造強化や悪天時の機動性を改善してきた。今月末から順次、運用を再開する。

 AOVの運用は昨年9月から、五島列島のほか八重山諸島(沖縄県)沖の東シナ海などで始まった。海流や海水温などを自動で観測するが今年、新たな役割が追加された。最も潮が引いた時の海岸線「低潮線」の観測。領海やEEZを線引きする基準となる。

 従来は航空機によるレーザー測位などで調べてきたが、AOVの導入によって、国際機関が勧める継続的で信頼性の高い調査が可能になる。海保の関係者は「科学調査のためのツールから、海洋権益を守るツールに昇格した」と語る。

 きっかけは中国の動きだ。2012年12月、資源開発が可能になる大陸棚を東シナ海に設定し、境界を沖縄トラフまでとする延伸申請を国連大陸棚限界委員会(CLCS)に提出した。日本が尖閣諸島を国有化したばかりの時期。中国が示した線引きは日本のEEZに入り、尖閣諸島を包む

 CLCSが実質審議に移らないよう、日本政府はすぐに異議を表明した。外務省は「審議が行われることは想定されない」との見解を示す。

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 一方、中国の海洋調査船派遣はさらに活発化。国連海洋法条約に基づく日本の事前同意を得なかったり、同意と異なる海域で活動したりする「特異行動」を取った調査船は、15年に延べ22隻、16年は11隻に及んだ。関係者は「彼らが地質調査をしていることがうかがえる」と指摘する。

 こうした動きに対抗するため、日本は昨年秋の16年度第2次補正予算で、海保の海洋調査船である「測量船」を20年以上ぶりに新造することを決め、56億円を計上。4年間で計約154億円を費やし、19年度中の就航を目指す既存の大型船2隻についても海底の地質を調査する測量機器を高機能化し、海底の状況を調べる無人潜水装置も調達する

 海保幹部は「CLCSで中国の大陸棚延伸が19年にも審議される可能性があり、中国の主張を覆す材料を集める必要がある」と明かす。

 昨年12月21日には、安倍晋三首相をはじめ閣僚6人による関係閣僚会議を開催。海洋調査を含む五つの海保業務について強化策を協議した。その翌日には、昨夏の概算要求から101億円を積み増し、海保としては過去最大の2106億円の新年度予算案が閣議決定。海洋調査の強化策の一環として、AOV8基の追加調達の経費も付いた。(佐々木康之)
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 〈大陸棚の延伸申請〉 国連海洋法条約は、海底の地質が自国の沿岸と同じだと証明できれば、200カイリ(約370キロ)の排他的経済水域(EEZ)を超え、最大350カイリ(約648キロ)まで大陸棚を延伸できるとしている。東シナ海では中国と韓国が2012年、沖縄トラフまで自国の大陸棚だと主張する延伸申請を国連大陸棚限界委員会(CLCS)に提出。日本政府はそれぞれに対して異議を表明している。

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