(朝鮮日報 2017/05/07)

 慶熙大学のA教授は前学期に不思議な体験をした。教養科目の講義を担当しているが、ある学生が「体の調子が悪いので授業に出席することができない」と病院の診断書を何度も提出してきたのだ。初めは「体が弱いんだな」程度に思っていたものの、他の学生が提出してきた診断書を見て疑いの心が生じるようになった。互いに違う病院名義の二つの診断書の様式が全く同じだった上、担当医までが同一人物だったからだ。病院側に問い合わせてみたところ、二人の学生の診察記録は存在しなかった。診断書を偽造し提出していたのだ。

 慶煕大学の学生賞罰委員会は、前学期に15の講座で偽造診断書を提出した18人の学生を摘発し、最大で有期停学3カ月の懲戒処分を下したと20日、明らかにした。最大で50回も偽造診断書を提出していた学生もいたことが分かった。調査過程で学生たちは「先輩が学科の団体チャットにアップした診断書ファイルを共有した」「ネット上からダウンロードした」と話すなど、さまざまな入手経路の存在が明らかになったという。慶煕大学のキム・ヤンギュン学生処長は「他の学校の友人から偽造文書を受け取ったというケースもあるなど、文書の偽造が学生社会全般にはびこっていると思われる。警鐘を鳴らすために教育的レベルで懲戒を下した」と説明する。

 診断書などの文書を偽造して使用することは、刑法上私文書偽造・偽造私文書行使などで懲役刑が下される犯罪だ。にもかかわらず、学生たちは出席点で不利益を被らないためにこれと言った罪悪感もなく偽造文書を作成しては使用していたわけだ。

 文書偽造は何も特定の大学に限ったことではない。ソウルのある私立大学に通う学生のカンさん(女性)=24=は、朝寝坊したり、いい天気で外出したりしたときは「偽造診断書」を利用する。友人が「授業を休む方法」として団体チャットに共有したファイルに手を加え、大学側に提出するのだ。カンさんは「実際に大学前にある病院の情報が記入されており、名前と生年月日だけを変更すればいい。6回使用したが、一度も捕まったことがない」と話す。ソウル大学大学院生のパクさん(女性)=30=は「前学期に本当に休みたくて偽造の入院証明書を作成し、3日ほど授業を休んだことがある。文書を偽造するという行為自体は良心に触れるが、聞きたくない授業を無理やり聞くよりはましだ」と話す。

 実際ネット上でも偽造文書を容易に見つけ出すことができる。学生たちがよく利用する文書共有サイトで「診断書」と検索すれば、職印までが押された偽造文書を1000-2000ウォン(約100-200円)で購入できるようになっている。初めから「学校提出用」と宣伝している販売者もいる

 また、病院以外の機関が発給した文書も偽造対象として使用されている。ソウル大卒のBさん(女性)=26=は「前学期に卒業を控えた友人が授業を休むために、受けもしなかった企業の面接確認書を提出しているのを見て驚いた。ほとんどの学生が『学校が企業の人事課に確認の電話を入れるようなことはしないはず。引っ掛かるわけがない』と話している」という。1999年1月生まれで法的にもいまだに未成年者である延世大学の新入生のイさん(19)は、浪人同期の学校サイトのIDに自分の写真を登録した。居酒屋で使用するためだ。イさんは、居酒屋で身分証明書の提示を求められた場合、「家に置いてきた。代わりに大学のサイトで私の生まれ年を確認できる」と提案する。イさんは「厳密に言えば偽造だが、大学生なのにお酒くらいは飲んでもいいのではないか」と話す。

 最高検察庁によると、2014年に韓国国内で偽造犯罪事件は2万1662件も発生した。これは、日本(2665件)の実に8倍に上る件数だ。日本の人口が韓国の2倍以上であることを思うと、韓国の偽造件数は多過ぎる

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 これについて、東国大学警察行政学科のクァク・テギョン教授は「社会進出を控えた大学生たちが何らの罪の思いなしに文書を偽造するというのは深刻な問題」とした上で「偽造文書で授業を休むことを『大学時代のロマン』と捉えるゆがんだ道徳不感症をしっかりと正すべきだ」と話した。


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