ポスト朴槿恵“親北政権”で日本にミサイル着弾という悪夢
(週刊文春2017年3月23日号 2017/03/16)

「(当選後は)私はまず北朝鮮に行きたい」

 韓国次期大統領の最有力候補といわれる野党「共に民主党」前代表の文在寅氏(64)は最近、メディアの取材にこう答えたという。

 三月十日、朴槿恵前大統領が弾劾訴追で罷免されることが決定し、韓国内の興味は五月にも行われる見通しの大統領選へと移っている。現地特派員が語る。

「文氏は盧武鉉元大統領の秘書室長を務めた左派政治家で、北朝鮮に対して思い入れが強い。北に離散家族がおり、〇四年には再会事業で訪朝し叔母に会っています。今回の選挙では、対する与党側も親米保守のキリスト教会を支持勢力に巻き返しを図っていますが、保守政権に嫌気が差した国民に支持され、文氏が頭一つ抜け出た状態です」

 文民は朴前政権によって完全閉鎖された北朝鮮の開城工業団地を復活させ、拡張開発するとも宣言しており、大統領になれば、露骨な〝親北政策〟を推進することが予測される。

 その影響を、産経新聞の加藤達也元ソウル支局長(現編集委員)が語る。

「実は朴槿恵政権は二〇一四年ごろから米国と連携し、モンゴルやウズベキスタン、タイ、アフリカ諸国など北朝鮮の『準友好国』を自陣営に引き入れる外交工作を行っています。具体的には情報機関の人間が現地で高官と接触し、好条件での経済協力などを約束する代わりに、北朝鮮との関係を断つよう仕向けて、一定の効果を上げてきました」

 ところが、文氏は「米国にノーと言えなければならない」という趣旨の発言をし、実際に盧武鉉政権時代に在韓米軍の縮小を実現した〝反米派〟でもある。

「新政権が、反米親北に舵を切れば、米韓チームが行ってきた外交の〝オセロ〟が再びひっくり返される可能性もあります」(同前)

 文氏は中国政府が強硬に撤回を求めるTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備も再検討するという

 米軍関係者が解説する。

「THAAD自体の迎撃射程は二百キロ程度で、あくまで韓国領内へ落下する北朝鮮の弾道ミサイルを想定していますが、中国が問題としているのは追尾のために装備されている『Ⅹバンドレーダー』の存在です。同レーダーの監視距離は約千キロで、旧満州や、ロシアのウラジオストクまで軍事活動の監視が可能。米軍にとっては貴重な軍事資産ですが、中国の反発などを受けて、配備が見直されれば、日本もその恩恵を受けられなくなります」

 さらに日本にとって影響が大きいのは、文氏が日韓で昨年十一月に締結した軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の撤回にも言及している点だ。防衛省関係者はこう憂慮する。

「GSOMIAの締結で、韓国軍の通信傍受や人的な情報収集に基づき、北朝鮮のミサイル発射とほぼ同時に日本政府に情報が伝わる態勢が構築されましたが、それが機能しなくなる可能性がある。北から日本へのミサイル到達時間は七、八分ですが、イージス艦や地対空誘導弾PAC3の配備も同時多発攻撃には万全とは言えません。日米韓三カ国の防衛を巡る不協和音は北や中国の思うツポです」

 おりしも、六日に北朝鮮が四発の弾道ミサイルを日本海にむけて発射。その際、近隣の航行船舶への伝達が、ミサイル落下から二十分後だったことも明らかになった。日本本土にミサイルが着弾する悪夢は現実味を帯びつつある。

 南北離散家族(コトバンク)

朝鮮戦争(1950~53年)の混乱で韓国と北朝鮮に生き別れた家族を指し、約1千万人にのぼるとされる。再会は南北赤十字社の合意で85年、初めて実現。2000年の南北首脳会談後に本格化し、10年までの17回で南北合計で約1万8千人が再会を果たした。韓国で再会を申請した約12万9千人のうち約5万7千人がすでに亡くなっている。(2014-02-21 朝日新聞 朝刊 2外報)