【こちら特報部】補助金訴訟大阪地裁退ける
(東京新聞 2017/02/10)

 大阪府内の朝鮮学校十校を運営する学校法人「大阪朝鮮学園」(大阪市東成区)が、大阪府と大阪市による補助金の不交付決定の取り消しなどを求めた訴訟で、大阪地裁は先月二十六日、訴えを全面的に退ける判決を言い渡した。学園側は今月七日に控訴した。「子どもたちの未来のために最後まで闘う」と誓う。(佐藤大)

◇「司法も朝鮮学校つぶしか」

「何一つ認めてもらえなかった。司法まで朝鮮学校をつぶしにかかっているのか」。大阪朝鮮学園の玄英昭理事長は九日、判決に対する収まらない怒りを吐露した。

 学園に対する補助は、府で一九七四年度、市で八七年度からそれぞれ始まった。二〇一〇年、橋下徹府知事(当時)は補助金交付の条件として「朝鮮総連と一線を画すこと」「北朝鮮指導者の肖像画を教室から外すこと」など四要件を提示。一〇年度は要件を満たさなかった高級学校分が支給されず、翌一一年度は生徒が訪朝したことを理由に、初中級学校分の不交付を決定。市も一一年度から補助金を止めた。

 学園側は一二年九月に提訴。「補助金不交付は教育への不当な政治介入だ。憲法の教育を受ける権利などを不当に侵害している」と主張した。しかし、大阪地裁判決は、補助金不交付の決定は「行政の裁量の範囲内」と認めた。補助金不交付によって「児童、生徒や保護者の学習環境の悪化や経済的負担の増大などの影響が生ずることが懸念される」としつつも、府の交付要件を満たしていないとして「交付が受けられないとしてもやむを得ない」と結論づけたのだ。

 弁護団長の丹羽雅雄弁護士は判決について「学習権や学校の歴史的役割について触れられていない。行政の裁量を統制するのが本来の司法の役割だが、それが全くできていない。行政救済判決だ」と批判する。

◇学園側控訴「子どもたちのため闘う」

 学園が運営する十校には児童や生徒計約千三百人が通う。停止された補助金(一一年度は計約一億円を申請)は学校経費の約一割に相当する。老朽化した校舎の修理や教材購入費に影響が及んでいるという。玄理事長は「われわれは民族アイデンティティーを育み、歴史を教えることも許されないのか」と肩を落とす。

 朝鮮学校への補助金は近年、全国的に減らされている。文部科学省によると、都道府県や市区町から朝鮮学校への補助金は〇九年度に計約八億一千九百万円だったが、一五年度は計約三億七千三百万円まで落ち込んでいる。

 文科省は昨年三月、朝鮮学校が所在する二十八都道府県に対し、馳浩文科相(当時)名で通知を出した。朝鮮学校について「北朝鮮と密接な関係を有する団体の朝鮮総連が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしている」と指摘した上で、補助金の透明性確保などを要求し、事実上再考を促した。さらに昨年八月には検討状況を照会した。その結果、茨城県などで補助金打ち切りの動きが広がった。

 補助金を巡る裁判とは別に、高校無償化制度の朝鮮学校への適用を求め、朝鮮学校の生徒や卒業生らが一三年一月以降、愛知、大阪、広島、福岡、東京で法廷闘争を続けている。今月十五日に大阪で結審を迎えるなど、いずれの裁判も大詰めを迎えている。

 大阪の無償化裁判でも弁護団長を務める丹羽弁護士は力を込める。「朝鮮学校にレッテルを貼り、悪い印象の中に押しとどめようということを政権や国が中心となってやっている。これを許してはならない。異なるものを分断、排除する社会にしていいのか、ということを問う裁判だ」


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