(朝鮮日報 206/12/31)

 春節(旧正月、2017年は1月28日)連休(1月27日~2月2日)を控える来年1月に中国人観光客を輸送するため韓国の航空会社が申請していたチャーター機の運航を、中国政府がはっきりとした理由もなく多数不許可にしていたことが30日、分かった。同じ目的で韓国国土交通部(省に相当)にチャーター機運航申請を出していた中国の航空会社も同日、突然申請撤回の意向を表明してきた。戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を急ぐ韓国政府に対し、韓国を訪れる観光客を減らすことでTHAAD配備に揺さぶりをかけるためと見られる。

 韓国国土交通部や航空業界関係者によると、アシアナ航空・チェジュ航空・ジンエアーなど韓国の航空各社が来月の運航のため申請していたチャーター機8便に対し、中国の交通運輸省民営航空局(以下、民航局)は28日、すべて不許可の方針を通知してきたという。航空会社別ではチェジュ航空が江蘇-仁川など6便、アシアナ航空は浙江省寧波-仁川の1便、ジンエアーは広西チワン族自治区桂林-済州の1便だ。不許可の理由について民航局は「理由は特にない」と述べたとのことだ。

 一方、来年1月に中国人観光客輸送のため韓国国土交通部にチャーター機運航を申請していた中国南方航空と東方航空も同日、突然「中国国内の事情」を理由に運航を撤回するとの意向を知らせてきた

 この背景には民航局など中国政府の指示があるものと見られる。チャーター機が多数不許可になったことで、中国の「春節特需」に期待していた韓国の航空・旅行業界は少なからぬ打撃を受けることになりそうだ。

 チャーター機運航は通常1カ月単位で申請するもので、運航の前月20日ごろに各航空会社が中国民航局に申請して許可を得る。中国民航局が不許可の方針を知らせてきたのは今月28日夜のことだった。翌29日に航空各社がそれぞれ国土交通部に報告したことで多数の不許可が明らかになった。航空会社別ではチェジュ航空が江蘇-仁川2便、山東-仁川1便、内モンゴル-仁川2便、広東-仁川など計6便が不許可になった。アシアナ航空は寧波-仁川1編、ジンエアーは広西チワン族自治区桂林-済州の1便が運航できなくなった。しかも、中国の航空会社も韓国政府に提出していたチャーター機運航申請を30日、突然撤回した。韓国の航空会社のある関係者は「これまでにもチャーター機運航が不許可になったことはあったが、書類不備や安全性の問題など、理由がはっきりしていた。今回のように明確な理由もなく多数不許可になったのは初めてだ」と語った。

 この期間は、中国外務省でTHAAD問題を担当する陳海アジア局副局長が、韓国政府が思いとどまるよう伝えたのにもかかわらず一方的に訪韓し、韓国国内の政財界関係者に接触した時期と重なる。26日から30日までだった陳海副局長の訪韓は、THAAD反対世論を高めるのが目的だったと見られている。中国政府がチャーター機運航を不許可にすることで、陳海副局長の訪韓効果を最大限引き出し、「THAAD配備が続く限り報復する」と警告しているのだ。北京の観光業界関係者は「中国の航空会社が韓国政府から既に許可を得ているチャーター機の運航まで撤回したのは、中国政府の指示以外に説明できない」と語った。

 ある航空会社関係者は「民航局に不許可理由を尋ねたが、『理由は特にない』と言われた」という。この関係者は「2月分のチャーター機はまだ運航申請していないが、民航局側は『1月だけでなく2月も不許可にする』と言ってきた」と語った。これは、安全上・書類上の問題がないことを意味している。

 韓国国土交通部は、中国にある韓国大使館を通じて航空局長名義で書簡を送るなど多方面から接触を試みているが、民航局は韓国側の電話や電子メールなどに一切反応していないとのことだ。中国の旅行代理店の中には不許可の理由として韓国に鳥インフルエンザ拡大を挙げているが、韓国の航空会社関係者は「そのような理由ならば明らかにできないはずがない」と言った。この関係者は「中国はTHAAD配備の各段階で韓国にそれ相応の対応をすると公言している。韓国がTHAAD配備を急いでいるため、報復措置のレベルを引き上げたものと見られる」と語った。

 チャーター機とは、定期便が運航していない、あるいは需要が高い路線に航空会社が一時的に運航させる航空機のことだ。韓国を訪れる中国人観光客を集めた中国の旅行代理店が韓国や中国の航空会社と協議して運航する。韓国の航空会社は中国民航局に、中国の航空会社は韓国国土交通部に許可を申請する。韓国の航空会社の場合、来年1月に2週間に3便の割合で座席数180席前後のチャーター機を運航する予定だった。これは、1月に韓国に到着する航空機の3%前後に当たるとのとこだ。

 1-2月には中国語圏最大の祝日・春節があり、韓国の航空会社や旅行代理店は「中国特需」に沸く時期だ。だが、今回のチャーター機不許可により売上ダウンは避けられなくなった。韓国の各業界が影響を受けるのは当然だが、中国企業への影響ももちろんある。観光客を集めた中国の旅行代理店は、すぐに代わりの便が見つかなければ、顧客に違約金を支払うか、払い戻しせざるを得なくなる。