【こちら特報部】「朝鮮学校差別」を追う
(東京新聞 2016/10/26)

 高校無償化制度の朝鮮学校への適用を求める「文部科学省前 金曜行動」が100回を数えた。政府は北朝鮮の拉致問題などを理由に除外したが、在日コリアンの子どもたちの学びの場に制裁を科すのはお門違いも甚だしい。一方、自治体の朝鮮学校への補助金を巡っては、文科省が3月末に再考を促す通知を都道府県に出したが、その後、どう対応したかを照会していることが分かった。公による「朝鮮学校差別」の現状を追った。 (佐藤大、白名正和)

文科省前、生徒ら「学ぶ権利を」

 今月二十一日、「金曜行動」は百回目を迎えた。「すべての子どもたちに学ぶ権利を」「日本政府は朝鮮学校を差別するな」。午後四時ごろ、東京や神奈川の朝鮮高級学校に通う生徒ら約千人が、東京・霞が関の文科省前でシュプレヒコールを上げた。中間テストの最中だったり、部活の公式戦を控えながら駆け付けた生徒も多かった。

 「金曜行動」は、朝鮮大学校(東京都小平市)の学生が呼びかける形で二〇一三年五月にスタートした。節目には代表者が文科省の担当者と面会し、無償化制度の適用を要請した。だが、文科省側は「法令の手続きに従って判断している」と繰り返すはかりだ。

 時間が許す限り「金曜行動」に参加してきたという神奈川朝鮮中高級学校(横浜市)高級部三年の男子生徒(十七)は「文科省に声が届いているか分からず、真っ暗な部屋に閉じ込められているように感じてきた」と肩を落としつつも「後輩たちが堂々と過ごせるようになるまでやる」と誓う。東京朝鮮中高級学校(東京都北区)高級部一年の男子生徒(十五)は「私たちには未来があり、夢がある。その未来と夢を奪わないでほしい」と力を込めた。

 高校無償化は、民主党政権時代の一〇年度に始まった。公立高校の生徒からは授業料を徴収せず、私立高校などの生徒には公立学校の授業料相当分(年十一万八千八百円)を就学支援金として助成する制度だった。外国人学校は、アメリカンスクールや中華学校などには適用されたが、朝鮮学校については一〇年十一月、北朝鮮による韓国・延坪島砲撃事件を受けて審査手続きを一時凍結。

 一二年末に自民党が政権に復帰すると、下村博文文科相(当時)は、拉致問題で進展がなく、朝鮮学校の人事や財政に在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の影響が及んでいるとして「現時点では国民の理解を得られない」と省令を改訂し、朝鮮学校の無償化指定の根拠となる規定を廃止した。

 朝鮮高級学校の生徒や卒業生らは「金曜行動」とともに、法廷闘争に立ち上がった。一三年一月、愛知と大阪の朝鮮高級学校の生徒らが国家賠償を求めて提訴し、広島、福岡、東京が続いた。裁判で朝鮮学校側は「学習権の侵害」や「人格権の侵害」を主張。これに対し国側は、朝鮮総連や北朝鮮との関係から「適正な学校運営がされていることについて十分な確証が得られない」「文科相の判断は不合理なものとはいえない」と反論する。

 東京地裁での訴訟は年度内に結審する見通しだ。弁護団の李春熙弁護士は「政治の問題ではなく、教育の権利や法律上の平等の問題だ。いくら国と国の関係が悪くても、やってはいけないことがある、という当たり前の判断を示してほしい」と強調する。

 朝鮮学校への兵糧攻めは、自治体の補助金にも及んでいる。

 文科省が、朝鮮学校のある二十八都道府県に対し、補助金の再考を促す通知を出したのは三月二十九日。さらに文科省は八月九日付で、検討状況を照会していた。年一回の定例調査である「私立高等学校等の実態調査」に添付する形で、「補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する検討状況」などを書かせる内容だ。同省国際課は「調査中であり各自治体の対応は分からない」と脱明する。

 「こちら特報部」が各自治体に確認したところ、補助金支出に慎重な自治体が少なくなかった。

 関東地方では、茨城県の橋本昌知事が四月の会見で、「(一六年度の補助金は)交付することは大変困難」との見解を示している。同県は一五年度、約百七十三万円を県内の一校に支給した。一六年度は当初予算に約百六十万円を計上したが、「国際情勢も芳しくなく、支給するかどうか検討中」と県総務課の担当者。群馬、栃木両県も「学校運営が適切か判断し決める」などと支給を明言しない。東京都と埼玉、千葉両県は通知以前から支給していない。

 在日特権を許さない市民の会(在特会)に襲撃された京都朝鮮第一初級学校(現・京都朝鮮初級学校)が所在する京都府では一五年度、府内の三校に教材費の支援として約五百十六万円を支給した。今年度は「支給しない可能性も含めて検討中」(府文教課)。

 ある県の担当者は「文科省の通知を受け取った時、支拾してはいけないんじゃないかというプレッシャーを感じた」と明かす。

 そもそも補助金は、通知以前から減らされ続けてきた。文科省によると、都道府県や市区町から朝鮮学校への補助金は〇八年度に計約八億一千九百万円だったものが、一四年度は計約三億七千百万円にまで落ち込んでいる。

 補助金カットと高校無償化からの除外は、朝鮮学校運営に大きな影響を与えている。全国朝鮮高級学校校長会長の慎吉雄・東京朝鮮中高級学校長は「生徒と学校に大きな負担がかかっている」と嘆く。

 朝鮮学校の運営は授業料と寄付で賄わなければならない。東京朝鮮中高級学校の場合、年間予算約三億円弱の八割を月三万四千円の授業料で賄う。「無償化の対象であれは、生徒一人当たり基本的に月九千九百円が補助される。授業料は標準的な額だが、生徒には母子家庭が多く負担になっており、滞納したまま卒業する子どももいる」と慎校長。校舎の雨漏りが補修できなかったが、卒業生に特別の寄付を募って防水工事にこぎつけた。

 これを差別と言わずして何と言うのだろうか。

 安達和志・神奈川大教授(行政法・教育法)は、高校無償化除外について「仮に北朝鮮や総連に問題があったとしても、日本で生まれ、日本で育った子どもたちの学習する権利を保障することは、切り離して考えるべきだ」と説く。

 自治体に補助金の再考を促す文科省の姿勢にも首をひねる。「自治体が出す補助金は、自治体の判断に委ねられている。文科省が一律にああしろこうしろと要求することが不自然だ。調査と称して回答を求め、文科省の意向と違うと理由や説明を求めるのは文科省のいつものやりかた。自治体は合理的でない要求の場合、はねつけるべきだ」

 田中宏・一橋大名誉教授(日本アジア関係史)は「国のやり方は『上からのヘイト』だ」と指弾する。

 「ヘイトスピーチ対策法が施行されたが、肝心の国がヘイトを励ますようなことをしている。国連は北朝鮮に経済制裁を科す一方で、朝鮮学校を無償化制度から除外することは差別だと指摘している。それなのに日本政府は、そこをごっちゃにしている。差別をあおる由々しき状態だ」

【デスクメモ】
 二十三日の日曜日、「日韓断交」を叫ぶへイトデモ隊が秋葉原や上野の繁華街を練り歩いた。露骨なコールやプラカードこそ目立たなかったものの、大量の警察官が徹底して抗議側を規制し、差別扇動行為を完遂させた。ヘイトスピーチ対法以肋に逆戻りである。どっと疲れが出た(圭)2016・10・26


朝鮮学校以外に通う朝鮮籍の生徒は無償化対象であり、日本国籍でも韓国籍でも朝鮮学校に通う生徒は無償化対象外にしているんですから、生徒に対する差別ではなく、「朝鮮学校」という施設の問題ですね。



誰も書かなかった「反日」地方紙の正体
481911137X