(統一日報 2016/01/01)

米中間での中立は不可能 自明となった韓国の選択 

韓国海洋戦略研究所 李春根

 ここ数十年来、韓国社会の最も熱い論争主題の一つは「韓米関係」だった。「米国と喧嘩して何が悪い?」、「(米大統領と)写真を撮るためなら米国に行かない」と、大統領になるまで米国に行ったことのないことを自慢げに話していた盧武鉉政権が登場すると、韓国社会では、それまで潜在してきた反米主義者が時を得たかのように姿を現した。伝統的な韓米友好外交は当然破綻した。

 盧武鉉政権は、韓米連合軍の「戦時作戦統制権」問題を韓国の主権問題にした。彼らは、戦時作戦統制権の行使は韓国大統領の同意が必要であるとの事実を本当に知らなかったのだろうか。

 さらに盧武鉉政権は、米中が争うときは、バランサーになるという荒唐な発想も持っていた

 韓国は米国と同盟関係であるため、米国と中国が戦うとき米国を支援する法的義務がある。つまり、米中間のバランサーになるためには、韓米同盟を終わらせなくてはならない。盧武鉉政権の反米主義は、それほど無知なものだった。

 筆者は、李明博・前大統領の最大の業績を、韓米同盟の回復と見る。ニューズウィーク誌は、李前大統領をフランスの代表的親米大統領サルコジに喩えて、「韓国のサルコジ」と紹介。「李大統領が韓国を救うため、国を右へ、そして米国側へ導いている」と説明した。

 ところが、朴槿惠政権になってから韓米関係に異状信号が灯った。この異常信号は、韓米関係の悪化というよりは、韓中関係が「蜜月」と表現されるほど親密になったことに起因する。朴槿惠政権の外交責任者は、「今われわれは米中両国から求愛されている」と言った。外交部長官は、韓中関係が密着になりすぎたため韓米関係が悪化していると憂慮する知識人たちに対し、「苦悩していない人」と批判した。はたしてそうだろうか。

 「米国には事務的、日本には敵対的、中国には屈従的」という朴槿惠外交への批判は、間違っているというのか。韓米関係がいま緊密でないという認識は、国際情勢を観察する多くの専門家の一般的な見解だ

 今の国際政治では、経済力よりも速く軍事力を増強させる中国が、覇権国の米国と衝突する現象が可視化している。南シナ海で見られる中国の攻撃的な行動は、急速に浮上した新興大国が常に示してきた行動の反復であるだけだ。英国もロシアもフランスも日本も米国も、国力が急速に増強されたときは積極的外交政策を展開した。

 シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授は、中国の行動を歴史に見られる強大国の典型的な行動の踏襲だと説明する。既存の覇権国は、新興大国の挑戦を決して放置してこなかった。これはもう一つの歴史の真実だ。だからこそ、世界は新興大国が浮上するたびに大戦争か極度の緊張状態に陥った。

 現在のアジアの国際政治状況は、まさに米中の典型的な覇権競争の結果だ。こういう状況で韓国が「米中とともに仲良くする」とか、「米中の間で中立を保つ」という発想を持つのは、国際政治の根本がわかっていないからだ韓国は「米国とは安保、中国とは経済」という全く利己的で虚しい発想をしている。韓国は結局、一方を選択せねばならない。最も重要な考慮は現実であり、副次的には道徳的考慮も重要だ。

 現実的な検討課題は国家安保だが、韓国人はすでに安保は米国と一緒にするしかないという現実をよく知っている。道徳的考慮をすれば、われわれと価値と生活様式が似ている国の肩を持つことだが、自由と民主がその基準になることを知らない人はいない。

 今、アジアの国々が、米中の覇権争いにおいて米国側に立つ状況を見ても、韓国の選択は自明だ。米国経済がまた世界最強の状態に転換している状況で、米国との関係を強化することは、韓国の安保だけでなく経済のためにも死活問題といわざるをえない。


韓日離間に成功した南北差は 求められる「価値同盟」の再認識

ジャーナリスト 金泌材


 平壌側の対南・対日戦略の基本は、韓日間の対立と摩擦を増幅させ、韓米日共助体制を破壊することだ。北韓で憲法の上に位置する『朝鮮労働党規約』は、「党の当面目的は、共和国北半部で社会主義強盛国家を建設し、全国的範囲で『民族解放民主主義革命』課題を遂行することにある」と宣言している。「民族解放民主主義革命」は北の韓半島共産化戦略だ

 「民族解放」とは日米の「帝国主義」を韓半島から追い出すことで、「人民民主主義革命」とは南韓に親北政権を樹立することだ。金日成はこの戦略に立脚し、韓半島共産化に有利な国際的環境を整えるため、1990年に「祖国統一汎民族連合」(凡民連)を作った

 汎民連の3つの軸は「汎民連南側本部」と「汎民連北側本部」、そして「汎民連海外本部」で、労働党「統戦部」が管掌する。北側は92年「海外本部」をベルリンから東京に移した。移転した理由は、統一ドイツより朝総連などがある日本が安全・便利だったからだ。いま汎民連の海外組織との連絡は、朝総連が運営する「汎民連海外本部共同事務局」が担当している。

 ソウルの南北問題研究所が1996年に発刊した『北韓の対南戦略解剖』には、1980年代に年間2400億ウォン(200億円相当)が日本から韓国に送られ、主思派の育成・支援に使われたと書いてある。この工作資金は、優秀な学生を訓練して言論界に送り込む工作にも使用された。以降、年間100人ほどの主思派が主要メディアに入ったという。

 北側が画策した韓日離間工作の例を見よう。汎民連が結成された年の11月、韓国で37の女性団体が集まって作った「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)は、主思派など親北勢力がその中枢に布陣してきた

 挺対協常任代表の尹美香の夫は、94年の「兄妹スパイ事件」で実刑を宣告された金三石だ。彼は93年、日本で北韓の工作員に包摂された。

 挺対協の実務を担当してきた孫美姫・対外協力委員長は、憲法裁判所の統合進歩党解散決定(2014年12月)に反対して1人デモまでした人物で、彼女の夫・韓忠穆は韓国内諸親北団体の連合体である「韓国進歩連帯」の共同代表だ。

 挺対協のシン・ミスク実行理事の夫の崔ドンジンも利敵団体である「汎民連南側本部」の編集委員長だ。

 挺対協文化広報委員長のペ・ウェスクは、主思派運動家などの集まりとなっている梨花民主同友会の事務局長や左派学父母会の支会長を兼任している。

 チョン・テヒョ生存者福祉委員長は、韓国キリスト教の代表的左派運動体「全国牧会者正義平和協議会」議長だ。

 挺対協は『韓国挺身隊問題対策協議会20年史』で、「慰安婦問題を南北が共同で議論、協力したことで、市民社会の次元では南北統一を成し遂げた」と評価した。挺対協が07年5月に開催した「日本軍慰安婦問題解決のためのアジア連帯会議」には、北韓労働党の外郭団体や朝総連の女性同盟関係者たちが大挙出席した。挺対協は金正日が死んだときには平壌に弔電を送っている。このように挺対協の中核は、テロや虐殺集団である「金氏王朝」と同志的に繋がっている

 韓日は一時的な対立と摩擦のため、長い未来への努力を中断・放棄してはならない。韓国には、北韓解放を超えて、アジア大陸へ自由の拡大を目標とする人々が多い。この自由の拡大は、自由を至高の価値と考える人々との連帯を前提とする。韓日両国民は、こういう次元で両国関係を再認識しようではないか。

韓米にまたがる諸問題

THAAD

 在韓米軍が韓国に配備を求めているのが高高度ミサイル防衛(THAAD)システムだ。北のミサイルを迎撃するためのレーダーとミサイルを軸とするシステムで、配備すれば韓国のミサイル防衛能力が格段に向上すると見込まれている。

 韓国は、中国が拒否感を示していることもあり、導入に消極的だ。ミサイルのレーダーは中国の一部地域も監視下に置く。そのため中国軍幹部も、配備に反対の考えを明らかにしている。THAADは対北ミサイル防衛には不適格との声もある。北とは距離が近いため、短距離ミサイル防衛用のPAC-3などで十分だという指摘だ。

 これに対して米国の民間団体「ミサイル防衛擁護同盟」のリキ・エリソン会長は「PAC-3は、1、2カ所の都市や飛行場ほどの範囲しか守れない」と指摘する。THAADはより広範囲をカバーできる上、レーダーの性能も優れているとの主張だ。

 一方、日本の中谷元・防衛相は昨年11月、日本にTHAADを配備することを検討すると述べた。日本はTHAAD導入により、イージスミサイル防衛システムとPAC-3しかない現行の防衛システムを強化し、3段構えにする構想を持っている。

TPP

 貿易を経済活動の柱とする韓国は、これまで主要な相手国・地域と自由貿易協定(FTA)を結んできた。唯一協定を結んでいない国といえば日本だけという状況で、日本は米国などが参加するTPP(環太平洋パートナーシップ)に加盟。韓国内では「乗り遅れるな」との危機感が広まった。

 一方で朴政権は中国が主導するアジアインフラ開発銀行(AIIB)への出資を決めた。TPPには加わらず、米国が不快感を示したAIIBには参加したことで、米国では「韓国は本当に同盟国なのか」との声が上がっている。

KFX開発

 KFXは韓国軍の次世代戦闘機で、韓国政府は14年9月に米国のロッキード・マーチン社と25件の技術を移転する契約を結んだが、核心技術の移転には待ったがかかった。

 韓国空軍が保有する戦闘機は、現在約400機。そのうち100機以上の旧型機が2020年から退役する予定だ。KFXは2025年までに120機製造され、26年から配備される計画だった。韓国は独力での開発も辞さない構えだが、このままでは納期に間に合わない公算が高い。国内では中東派兵など、米軍の負担を軽減する”行動”を起こさなければ、信用を得るのは難しいとの指摘も出ている。


>憲法裁判所の統合進歩党解散決定(2014年12月)
これ↓参照
2014年12月19日


親中度が増すことはあっても、当分減ることはないでしょうね。

日本としては、北朝鮮・中国に乗せられないよう、また、「韓国内の政治が混乱して北に乗じられないように日本は譲歩すべき」なんて雰囲気にならないように気を付けるだけですね。



韓国は未来に存続できるのか?—7つのヤバイ問題—
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