〈オピニオン〉耕論 韓流2011
(朝日新聞 2011/11/11)

根本敬さん 漫画家・エッセイスト
58年生まれ。81年、漫画誌「ガロ」デビュー。著書に「人生解毒波止場」など。近く幻の韓国ガイド本「復刻ディープコリア」を刊行予定


ドラマと真逆の魅力ある

 韓国と関わりだして、かれこれ20年以上になります。優しげでこじゃれた韓流ドラマとは真逆の国だと感じています。あけすけで、ずさんでワイルド。しかし人情がある。これが四半世紀、変わらぬ韓国の印象です。

 韓国人は結構、家族で大衆キャバレーに行ったりもする。日本のファミレス感覚で、お父さんが酒飲んでホステスの太もも触ってるわきで、子供がはしゃぎ回ってる。地方のラブホテルに家族旅行で泊まりますからね。おばあちゃんまでくっついて来て、部屋で自炊してたりする。その方が安いからって。

 韓国人が、日本人にすぐに突きつける言葉が「日帝36年」。日本が朝鮮半島を支配した足かけ36年のことです。いつだったか韓国の知人が電話をかけてきて、いきなり「日帝36年」とか言い出すから面倒臭いなと思ってたら、「日本に行くので安い宿を取ってくれ」だって。

 戦争の話になると日本のインテリは「二度とあってはならない」なんて萎縮します。それは考えなきゃいけないとは思いますが、枕詞みたいなもんですから、いちいち贖罪意識なんか感じてたらきりがないですよ

 数年前、あてもなくソウルの下町をぶらぶらしてて、立ち話したアジョシ(おじさん)に「安い宿ないか」と聞いたら「あるよ」と。で、連れてかれたのが、その人の自宅なの。親切と言うか、小遣いが欲しいわけ。最初の一泊5万円が5千円になり、最後は1500円。台所で寝て行け、と。そこで「日帝36年」なんて絶対に言わないし、カモだと見れば「日本人は何も悪いことしてない」とか平気で言い出しますからね

 韓国は、恨みを希望の原動力とする国。よくいう「恨[ハン]」とはそのことです。でもそれだけじゃ重いから「ケンチャナヨ」(ノープロブレム)も潤滑油としてある。ケンチャナヨはその場しのぎの合理主義で、あの国の気質をよく表しています

 ただ、韓国人って、そういうのを面白がられるのが、すごく嫌なわけ。大衆音楽のポンチャック・ディスコなんて、道端にしゃがんでネギ売ってるようなアジュマ(おばちゃん)たちには、すごい人気ですけど、公には無いものとされてますから。

 ドラマやKポップは、韓国人がこうありたい、ウリナラ(我が国)をこう見て欲しいという希望を描いたものです。韓流ブームは、それがリアルな韓国だという誤解を、日本人が進んで引き受けることで成り立ってる

 そこで「実像とドラマは違う」なんて絶対に言わないですから。ましてやお金が絡めば

 韓流ブームになにか言うつもりはないけど、自分がひかれる韓国とは別のもの。あけすけでずさんでどうしようもない、すべてを肯定しての愛すべき国なんです。(聞き手・秋山惣一郎)



韓国人がフィクションと割り切っているなら良いのですが、特に歴史モノの場合、史料が少ない、素材になる史実がない(?)ため、「こうありたい」「こう見て欲しい」と製作者がつくっても、視聴者が検証できない(しない)まま「こうだったニダ」と偽史を信じ、“栄えある偽史”と正史のギャップを『ヒデヨシ』『日帝』に押し付けるのがね……




豪定本 ザ・ディープ・コリア
根本 敬 湯浅 学 船橋 英雄
4860200314

嫌「韓」第二幕! 作られた韓流ブーム (別冊宝島) (別冊宝島 ノンフィクション)
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